「農民」記事データベース20110815-985-01

東電は直ちに全面賠償せよ

農民連、食健連
東電・政府賠償請求行動

関連/8・3行動参加者の声
  /TPPはいらない! 8・27緊急集会


誠意ない対応次々と暴露
被災農家の怒りが爆発

 「農家が損害の請求を出しても、なんですぐ東電は支払わないのか」「しかも仮払いで半額だ。生活費にまでまわらねぇ」「風評被害の損害請求はなんで正式にしないのか。融資が受けられないんだ」――東京電力の会議室に、被災農家の怒りの声があふれました。農民連と全国食健連は8月3日、東電・政府賠償請求行動を行い、東京・千代田区の東京電力本社前に福島の農家らが200人以上、支援する労働者や消費者などを含めると350人以上が駆けつけ、「東電はただちに全面的な賠償を行え!」と、本社ビルにぶつけました。

 東電本社抗議

 福島からバス3台で駆けつけた参加者が、「東電は本当の空を返せ!」「せめて子どもだけでも守ってあげて!」などのプラカードやムシロ旗をかざして東電本社前に着くと、多くのマスコミがテレビカメラをかざしてワッと殺到します。

 肉牛2頭も千葉から駆けつけ、騒然とした中で始まった「東電への抗議、賠償請求行動」。農民連の白石淳一会長があいさつし、「原発事故は人災であり、損害賠償は東電の最低限の責務だ。しかし、請求に対してわずかしか支払っていない。しかも東電は、加害者でありながら被害者を脅すような言動を各地で行っている。絶対に許されない。損害賠償を勝ち取るかどうかは農家にとって死活問題であり、『ただちに全面的な賠償を行え』の声を世論にして東電にただちに損害賠償をさせよう」と呼びかけました。

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東電本社前でこぶしをあげる被災地の農民たち

 その後、生産者から現状の報告があり、各団体代表から連帯のあいさつがありました。

 東電との交渉

 一方、代表団29人が参加した東電本社との交渉では、(1)「挙証責任は請求者にある」など、東電職員の目に余る言動に対して謝罪と訂正を行うこと(2)農民連が提出した請求のうち、いまだ仮払いされていない事案についてただちに支払うこと(3)5月以降の出荷制限、風評被害について、個人の請求を受け付けただちに賠償すること(4)30キロ圏内の賠償を支払うこと(5)指針にとらわれることなく全面的に賠償すること(6)過度の書類提出を避け、請求書式も柔軟に対応すること―の6点を要求。

 対応した東電・被災者支援対策本部の橘田昌哉部長は、「みなさんのご要望を真しに受け止め、被災者の心情を傷つけるような行き過ぎた言動には謝罪します」と深々と頭を下げました。しかし、農家への損害賠償はさっぱり進んでおらず、交渉参加者からは怒りをこみ上げる発言が相次ぎ、東電の誠意のない対応が次々と暴露されました。

支払い引き延ばしは許さない

 福島・須賀川農民連の松川正夫さんは「請求書を出した時、『もうこれ以上書類を出す必要はないな』と確認したのに、後日、担当者から『種や苗代金の領収書を出せ、耕作日誌を出せ』と言ってきた。あまりにもバカにしているので、『今日、本社に行って実情を話す』と言ったら、今度は『出さなくてもいい』と言ってきた。東電は用もない書類を出させ、支払いを引き延ばしているのではないか」と抗議しました。

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「なんで支払わないんだ!」―本社交渉

 また、風評被害で収入がなくなり電気代を支払えないために東電から「送電停止」の勧告を受けた群馬農民連のきのこ農家や農民連本部の斉藤敏之さんは「東電が風評被害の請求を正式に受け取ろうとしないために銀行は信用せず、せっかくできた国の『つなぎ融資』も受けられない。東電職員は『出るところに出たっていいんだ』と脅しもかけてきた。なぜ、こんなひどい仕打ちをするのか。ただちに損害賠償せよ」、「風評被害では団体には支払っているのに、個人には請求の書式さえ示していない。差別するのか」と追及すると、「あとで文書で回答する」と約束しました。

 国会議員要請

 その後参加者は国会に移動し、36班に分かれて、衆参両院の農水委員会・経済産業委員会・文部科学委員会に所属するすべての国会議員120人に、(1)東電にすみやかに全面的賠償を行うよう政治の役割を果たすこと(2)賠償金をいったん政府が仮払いする制度を確立することーの2点を要請し、被災地の実情を訴えました。

 まとめの集会では、日本共産党の紙智子参院議員が激励のあいさつをし、参加者から「今日の行動は、今後のたたかいに弾みをつけた」などの感想が出されました。最後に食健連の坂口正明事務局長が「今日は東電の居直りを糾弾し、全面賠償にむけた運動をさらに前進させるきっかけになった。『ただちに全面賠償を』という要求は大義あるものであり、農家が力いっぱい生産できるようになることは消費者の願いでもある。要求実現にむけてがんばろう」と呼びかけました。


8・3行動参加者の声

 1頭あたり経費は月80万円
 100万円で売れないと厳しい

  福島県湯川村の菅沼知恵さん(肥育牛)

画像 東電との交渉と国会議員要請に参加しました。交渉では「言いたいことを好きに言っていい」と言われたので、「東電の人たちはみんなボーナスをもらっているんですよね」「私たちのワラを買ってください」と、思いをぶつけました。

 40頭の牛を飼っていますが、出荷を迎える牛が4頭います。1頭あたり月に80万円の経費がかかり、100万円で売れないと月々の家計が回っていきません。

 上は高校2年生、下は小学6年生の3人の子どもを抱えており、先行きが不透明です。私たちは逃げも隠れもしません。牛の耳には10ケタの番号がついており、生産者も生産地もわかります。安全で自信をもって作った牛の肉を、東電に買ってもらって、バーベキュー大会でも開いてもらいたいと思います。

 議員要請には、初めて同行しました。いっしょに回った新潟県連の今井健会長から「農民連の要請で、これほど話をよく聞いてくれたことはなかった」と言われました。

 みなさんとの連携と団結を強めて、東電に負けないで農業を続けていきたい。

 解決まで2、3年はかかる
 たくさんの熱い支援をぜひ

  福島県川俣町の斎藤憲雄さん(酪農)

画像 乳牛を約40頭飼育しています。5月3日まで出荷停止が続いていました。4月26日の東電本社前での抗議行動に参加したときは40リットルの牛乳をもってきました。今回で3回目になります。

 北海道農民連の農家がトラック1台分の干し草を提供してくれ、本当にありがたかった。これからは、干し草、廃用牛、ふんを他に提供することができないことなど、問題が次々にでてきます。「どういうことなんだ!」と、怒りがわいてきます。

 解決まで2、3年はかかるかもしれませんが、がんばります。みなさんの支援をお願いします。

 東電は農民を粗末にする、
 JALとよく似た会社です

  JAL客室乗務員不当解雇撤回裁判原告団事務局次長・石賀田鶴子さん

画像 昨年大みそかに日本航空(JAL)から不当解雇されたとき、真っ先に支援の手を差し伸べてくれたのは農民連の方々でした。たくさんのお米を送っていただき、本当にありがとうございました。今日はお礼が言いたくて最後までみなさんと一緒に行動しました。

 今日(3日)、東京都労働委員会は、JALが、解雇撤回を求める争議権の確立を妨害したとして、不当労働行為と認め、勝利命令を出しました。(拍手)

 東電とJALは、利用者に対するいい顔とは違って、労働者と農民を粗末にする会社だという点で、本当によく似た会社だと思います。これからも、お互いに連帯してがんばっていきたい。


食、くらし、地域経済、いのちを守りたい
TPPはいらない! 8・27緊急集会
▼と き 8月27日(土)午後1時〜
▼ところ 東京「日比谷公会堂」
▼集会後、銀座パレード(4時終了)
▼問い合せ先 全国食健連 Tel 03(3370)6112

(新聞「農民」2011.8.15付)
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2011年8月

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