「農民」記事データベース20110808-984-05

汚染稲わらで価格暴落

新マルキンの改善で農家守れ

食健連、農民連が農水省交渉

関連/放射能汚染米検査 政府は責任もって行え

 食健連、農民連は7月28日、「原発被害の賠償と稲ワラ・牛肉問題」と、「二重ローン、米問題」の2班に分かれて農水省に要請しました。


画像 「原発被害の賠償と稲ワラ・牛肉問題」では、一刻も早く全面的賠償を行うよう東京電力に対して指導すること、また政府がいったん仮払いする制度の確立を強く求めました。福島県農民連の根本敬事務局長は、「請求時に東電が要求する書類が多すぎ、泣き寝入りする農家が大勢いる。農水省として手立てをとるべきだ」と迫りました。

 価格の回復へ全頭検査せよ

 ますます事態が深刻化している稲ワラと牛肉のセシウム汚染の問題では、「汚染された稲ワラを食べさせていない牛も価格が暴落している。50〜60万円が相場だったF1(交雑種)価格が、現在では10万円前後に暴落し、30万円はする経費を大きく割り込んでいる」(福島)、「牛の出荷ができなくなり、飼養管理の難しい出荷直前の牛が牛舎にどんどん増えている」(宮城)など、畜産農家の悲痛な実態が訴えられました。

 農民連は、「価格の回復には消費者が安心して牛肉を買えることが必要であり、県まかせにせず国が責任を持って全頭検査すべき」と求めましたが、農水省は「確かにその要望は強い。しかし分析機器など全頭検査できる体制がない」との答弁にとどまりました。

 参加者からは「重要なのは、国が責任を持つとアピールすることだ。国の明確な責任表明なしでは、いつまでたっても展望が開けない」という声が噴出しました。

 遅い東電の賠償、経営維持はムリ

 また汚染された稲ワラを食べさせていないにもかかわらず、価格が暴落している牛について、農水省は「風評被害なので、東京電力に損害請求すべき」として何の対策もとっていません。要請では、「つなぎ融資やいつ支払われるのか定かでない東電の賠償では、畜産農家は経営が維持できない状態だ。全国一律計算の新マルキン制度(※)から福島県を切り離して算定し、早期支払いで畜産経営を守ってほしい」(福島)、「BSEの発生時のように、今回の原発事故でも特別マルキン制度を設けて、農家支援の体制をつくるべき」(宮城)など、新マルキン制度の改善や、実態に合った運用を求める声が相次ぎました。


 新マルキン 肉用牛肥育経営安定特別対策事業のこと。国と生産者が資金を積み立て、肥育牛1頭当たりの粗収益が生産費を下回った時に、差額の8割を肥育牛補てん金として交付する事業。


放射能汚染米検査
政府は責任もって行え

 「米政策」にかかわる交渉では、放射能汚染の可能性がある米は、国の責任で検査し、管理する対策を講じることを要求しました。しかし、なんら対策を取ろうとしない農水省に対して、参加者は「早ければ来週には千葉県産の早場米が出回る。農家と消費者の不安を取り除くためにも、検査は米だけでなく、土壌検査にまでさかのぼって実施せよ」と訴えました。

 また、農水省が米の先物取引の試験上場を認可したことに対して、「震災で大変なときに、米を投機の対象にするとは何事か。認可を撤回すべきだ」と批判しました。

 さらに、農家と農業生産組織の二重ローン問題を解決し、「つなぎ融資」をさらに活用しやすくするよう求めました。

 来年3月に廃止の動きがある免税軽油の問題では、農水省としても「継続されることが望ましい」と答弁。制度を継続し、農家負担の軽減を重ねて要求しました。

(新聞「農民」2011.8.8付)
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2011年8月

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