「農民」記事データベース20110808-984-01

全国でピンチ
シイタケ生産

風評被害で取引拒否、返品も

関連/安全な原木の供給を国は保障してほしい
  /米屋さんと生産者をつなぐ交流会


福島第一原発事故 原木への影響不安
国は安全基準を早く作れ

 東京電力・福島第一原発の事故による影響は、福島産のシイタケ原木を使っている全国のシイタケ生産者にも被害が及んでいます。

 全国の農家に54%の原木供給

画像 福島県はシイタケ原木の主要産地で、全国の農家に約2万8000立方メートル(全国への供給量の54%)の原木を供給しています。

 林野庁は、キノコ原木への影響を調べるために、東北・関東の9県40カ所でサンプリング調査を行っていますが、中間結果が出るのが9月初旬、最終結果は来年3月になる見込みです。これではシイタケ生産者にとって、出荷に大きな影響がでます。

 農民連は7月1日の農水省交渉で、シイタケ原木の問題を取り上げ、(1)福島産に替わる原木の確保(2)国の出荷制限指示や放射性物質の検出により出荷不能となったり、風評被害が発生した場合には国と東電が賠償すること(3)価格が高騰した分を国と東電で補償すること―を求めています。

 7月19、28両日には、和歌山県紀の川市の紀ノ川農協で、奈良、和歌山、大阪、三重の各府県から原木シイタケの生産者ら13人が集まり、「原発事故問題・原木シイタケ生産者連絡会」(代表世話人・車谷年秋さん=奈良県吉野町=、事務局は奈良県農民連)を結成しました。安全でおいしい原木シイタケを作り続けるために、原発事故問題の情報交換と対策を講じていくことが目的です。当面は、原木の調達・確保と東電に対する損害賠償の準備を行うことにしています。8月10日には、農水省と東電本社との交渉を行うことを決めました。

 キノコ、シイタケへの放射能の影響も深刻です。農水省は7月19日現在、福島県内16市町村で生産される露地栽培用原木シイタケと3市町の施設栽培用の原木シイタケを出荷制限しています。

国と東電は損害賠償と原木の確保を

 通常価格よりも安く買われて…

 さらに、原木シイタケの出荷制限は、キノコ、シイタケへの風評被害をもたらしています。全国食用きのこ種菌協会は「出荷制限指示品目、制限地域に関係なく、福島県内全域において、原発事故を理由に『福島県産』というだけで取引を拒否され、取引が行われたとしても、通常価格よりもかなり安く買われている状況。取引された商品も『福島県産』というだけで買い手がつかず返品されている状況」(原子力損害賠償紛争審査会に提出した資料)などと報告しています。


安全な原木の供給を国は保障してほしい

国産原木しいたけ生産者の会会長(奈良・吉野町) 井上順一さん

 私たちは、一切の農薬や添加剤を使用しない原木シイタケ生産者の集まりです。

 昔ながらのクヌギやナラの原木にシイタケ菌を打ち込んで(植菌)、1年以上の時間をかけて、自然の中で菌をまん延させて、ほだ木を作ります。

 国産の原木で栽培される「原木シイタケ」は、安全で健康にもよく、クヌギやナラの木を使うことで、森林の新陳代謝を促し、活力を高め、それが空気と水、環境を守ることにつながっているのです。

画像
シイタケ原木を前に井上順一さん(中央)

 私も品質や規格に優れた東北地方の原木を使用しています。毎年、2月から3月までに植菌をします。今回の原発事故による放射能汚染に関して、林野庁が来年3月に、サンプリング調査の最終結果を出すというのでは、植菌作業が終わっており、結果次第では、ほだ木が使用不可になるおそれがあります。せめて原木の伐採時期の10月までには、安全なシイタケ原木の基準を作ったうえで、必要な量の原木供給に努めていただきたい。

 安全な原木の搬出が困難で、価格が上昇するようなことがあれば、これを国で保障していただく方向でなければ、原木シイタケ農家は、廃業することになると危ぐしています。

 全国の林家のみなさんのなかで、安全なシイタケ原木をお持ちの方は、ぜひ原木の提供をお願いします。


米屋さんと生産者をつなぐ交流会
東京
会場

8月21日(日)午後2時〜講演「放射能汚染と食物」(生井兵治)、その後交流会

会  場 東京・文京区民センター3階会議室(地下鉄三田線、大江戸線「春日駅」徒歩0分、または丸ノ内線、南北線「後楽園駅」徒歩5分)
参 加 費
無料
申し込み 農民連ふるさとネット Tel 03(3590)1337 Fax 03(3590)9524
大阪
会場
8月28日(日)午後2時〜(交流会)、5時〜(懇親会)
会  場 大阪市都島区・大阪リバーサイドホテル(JR環状線「桜ノ宮駅」西口から徒歩2分)
参 加 費 無料、ただし懇親会は3000円
申し込み 農民連近畿米ネット Tel 06(6965)2900 Fax 06(6965)2901

(新聞「農民」2011.8.8付)
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2011年8月

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