「農民」記事データベース20110801-983-01

牛肉 稲わらで放射能汚染

“東電の責任ではない”
居直り発言に怒号や抗議

東電・国は直ちに全面賠償を
宮城農民連が福島支社に要請

関連/指導・対策が後手後手の国に怒り ふくらむ飼料代 賠償支払いを

 東京電力第一原発の事故で、牧草や稲わらから暫定許容値を超える放射性セシウムが検出され、汚染された牛肉が全国に流通。酪農家や畜産農家は、出荷制限や価格の暴落で経営の危機にさらされています。また、牛肉に対する国民の不安は深刻です。東電と国は、ただちに全面的な損害賠償をおこなうべきです。そして、汚染された牛肉を流通させない対策や、信頼を回復させるためにただちに全頭検査が求められています。


国は信頼回復へ全頭検査せよ

 宮城農民連は7月20日、農民連事務所(大崎市)に東電福島支社の担当者を呼んで、「被害はただちに全額補償すること。刈り取った牧草の処分については、すみやかに具体的な対処を行うこと」などの要望書を手渡し、損害賠償の請求の仕方など説明を受けました。この要請と説明会には、被害にあった酪農家・畜産農家のほかに、丸森町の担当職員など約50人が参加しました(半数は農民連会員外)。

 このなかで、東電の担当者は「汚染牛肉は東電の責任ではない」と、居直り発言。あたかも農家の手落ち、農水省の指導不徹底が原因であるかのような発言に、畜産農家らは「なにバカなことを言ってるんだ!」「発言を撤回しろ!」など抗議の声が上がり、会場は怒号に包まれました。また「牛には毎日、エサを食わせなければなんね。出荷制限がかかれば収入がゼロになりエサ代も出ない。早く仮払いしてくれ」など、怒りや不安の声が上がりました。これに対し東電側は、謝罪するとともに「本店に持ち帰って検討する」の一点張りで具体的な回答はいっさいありませんでした。

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東電担当者(右側)の説明を聞く酪農家・畜産農家(提供=「しんぶん赤旗」)

 また東北6県の農民連で構成する東北農団連(東北農業農民団体連絡協議会)は7月19日、東北農政局と交渉を行い、「BSEの時と同じように、国が全頭検査を行って安全な牛肉だけ流通させる体制を至急確立し、信頼回復に努めよ」と要請しました。


指導・対策が後手後手の国に怒り
ふくらむ飼料代 賠償支払いを

稲作と和牛の肥育・繁殖をしている
菅沼弘志さん(福島・湯川村)

 一刻も早く全頭検査を実施して、消費者からの信頼回復に全力で取り組んでほしい。

 昨年の口蹄疫(こうていえき)、地震・津波・原発事故と災難が続いて、多くの畜産農家は飼料代金の赤字だけが膨らんでおり、経営はもうどうにもならないところまで追い詰められている。

 稲わらは、子牛から市場への出荷時まで、ずっと与え続ける飼料で、畜産農家にとっては貴重な自給飼料だ。会津では昨年の秋の天候が悪くて稲わらが確保できず、春に取り入れた農家も多かったのではないか。国や県の指導・対策が後手後手になっていることも怒りに思うし、放射性物質をまき散らした東京電力には絶対、すぐに賠償してもらいたい。

 畜産農家と話すと、「これでもうやめる」という人もいるが、「こんな被害を受けて、黙ったままではやめられない」という怒りの声も広がっている。

 政府は「つなぎ融資を使え」と言うが、少し規模の大きい畜産農家は1日のえさ代が5万円、1カ月150万円もかかり、融資では打開できないほど、現状は深刻だ。

 私も2頭分、48万円を東京電力に賠償請求している。即刻、賠償を支払うか、国が立て替え払いをしてもらいたい。

(新聞「農民」2011.8.1付)
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2011年8月

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