「農民」記事データベース20110711-980-02

米の先物取引の試験上場の
「認可」決定に強く抗議する

農民連会長 白石淳一

 鹿野道彦農水大臣は7月1日、東京穀物取引所などが提出していた米の先物取引の試験上場の申請に対して、「認可する」と発表しました。


 世界的な食糧不足と価格高騰、そして東日本大震災で農業が大打撃を受けるなか、米の需給がひっ迫し米価が大暴騰している。こうしたなかで、米を投機の対象にする先物取引を認可することは、とうてい認められない。農民連の再三にわたる「認めるな」の申し入れに対して、農水省は「関係者の意見をきいて判断」などと回答しながら、公式な議論の場は食料・農業・農村政策審議会の「食糧部会」のみで、それも新しい備蓄運営方針に関する議論の場で副題的に議論されたにすぎない。一般の農家はじめ国民の意見を聞く場は、まったくもうけられていない。野党はもとより与党からさえ「拙速」の声があがるなか、決定の期限(7月25日)を待たずに「認可」を決定したことは、米の安定供給のために生産費を割り込んでまで米を作り続ける全国の米農家に対する重大な挑戦である。

 先物取引は、「先々の相場を読んで売りと買いを同時に行い、現物は動かさないで差額で精算」が基本である。よって価格の乱高下の中でこそ、うまみが出る仕組みで、ただでさえ不安定な米価が、投機筋の資金投入で価格がいっそう激しく乱れることは必至である。農水省は「価格変動のリスク軽減に必要」との商品取引所や一部の業者の言い分を代弁しているが、リスク軽減の最大の手段は「需給と価格の安定」であり、ここにこそ政府・農水省の果たすべき役割がある。また「生産者にも将来の米価が予測できれば作付けの目安になる」としているが、農家が先物相場を見て、作ったり作らなかったりでは、生産目標数量の達成を条件とする戸別所得制度は成り立たない。米の安定的な生産にも流通にも重大な支障を来すことは明らかである。

 農水省が米の需給と価格の安定に対する責任を投げ捨て、先物取引の試験上場を「認可」したことに強く抗議し、撤回を要求する。

(新聞「農民」2011.7.11付)
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2011年7月

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