日本から原発なくそう
エネルギー政策の転換訴える旅
福島県農民連会長の亀田俊英さんは、5月13日から7日間フランスを訪問し、原発災害に見舞われた“FUKUSHIMA”を語り、原発ゼロにむけたエネルギー政策の転換を訴えました。東京電力福島第一原発から20キロ圏内に住んでいた亀田さんは避難を余儀なくされましたが、今は郡山市で生活する毎日です。亀田さんにフランスでの訪問の様子を聞きました。
原発事故被災地福島から
原発大国フランスへ
福島県農民連会長 亀田 俊英さん
「支援したい」の声にこたえて
フランス訪問のきっかけは、フランスで日本との農業分野を通じた交流事業に取り組んでいる雨宮裕子さんから、「被災農家を支援したい」という熱心な呼びかけでした。
いまフランスには19カ所に58基の原発があり、フランスは電力の80%近くを原発に頼っている、いわば「原子力大国」です。私は、AMAP(農民農業を支える会・オーバニー市)の集会や、農と環境をテーマにした研究機関のシンポジウム(パリ)、「緑の党」の集会(レンヌ市)、有機農産物に取り組む農業団体や農家などと懇談し、原発事故によって福島の農民が受けた被害、損害賠償のたたかい、そして「何としても福島でものをつくり続けたい」という話をしました。
「原発やむなし」という声が圧倒的に多い地域で、「原発の『安全神話』はまやかしだった。事故が起こってどんなに福島の人たちが苦しめられているか」を話しました。ブルターニュ地方では原発を廃炉にするために止めたものの、ばく大な経費がかかるため作業がストップしていますが、そういうことは地域の住民にはいっさい知らされていないそうです。
涙流して話聞く乳業会社の社長
レンヌ近くのプルダニエル市の農業見本市では、酪農家で地域の乳業メーカーの社長さんが「カメ(亀田)の話はよくわかったが、フランスでは原発は必要だ」と言いました。そこで、農民連前会長の佐々木健三さんや福島の酪農家の話をしたところ、「やっぱり原発はだめだ」とまでは言いませんでしたが、涙を流して聞いてくれました。
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プルダニエル市の講演会で(右から4人目が亀田さん) |
驚いたことにマスコミが注目し、全国紙「ル・モンド」などのインタビューを受けました。「いま一番やらなければならないことは何か」との質問に、「事故の責任はあきらかに東電と国にあり、人災なのだから完全な賠償を求めていくことだ」と答えると、「まったくその通りだ」と言ってくれました。それが新聞に載ったこともあり、フランスに行ってよかったと思っています。
世界に広がる「原発ノー」の声
ドイツやスイスは、期限を切って原発ゼロに向けて動き出しました。イタリアの国民は、94%が「原発ノー」を意思表示しました。震災から3カ月目となった6月11日には、フランスでも原発廃止とエネルギー政策の転換を求める大規模な集会とデモが行われています。ビア・カンペシーナに入っている「国境なき農業」という団体の人から、「日本ではいつ原発はなくなるのか」と質問されました。私たちの仕事は「日本から原発をなくす」ことであり、これを世界に広げていくことだと強く思いました。
(新聞「農民」2011.7.4付)
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