食糧部会
備蓄米放出は在庫と価格で判断
JAなど米の先物取引上場に反対意見
農水省は5月27日、食料・農業・農村政策審議会の食糧部会を開き、政府備蓄米、東日本大震災後の米をめぐる状況などについて議論しました。備蓄米は、2011年度から毎年20万トンを買い入れ、5年を経過した米を飼料用などに販売する棚上げ備蓄方式になりました。
7月決定の予定 農水省は、部会に備蓄米放出ルールについてのたたき台を示しました。それによれば、安定供給に懸念が生じたときは緊急調査を実施し、(1)6月末の民間在庫が例年の水準を相当下回る(2)相対取引価格や小売価格が前年比で一定以上、上昇した場合―に食糧部会の議論を経て、農相が放出の決定をするというもの。今後も同部会で議論を続け、7月に決める予定です。
出席委員からは、「価格は前年比でなく、戸別所得補償制度における標準的販売価格を基準に一定の比率だけ価格が上がったら放出を判断する方法にすべきだ」(JA全中の冨士重夫専務)などの意見が出されました。
震災後の状況は
震災後の米の状況について、農水省は、地震・津波被害による水田の被害は約2万ヘクタールで生産量が9万トン、原発事故による被害では5万トン、合わせて14万トン減るとしました。一方、県内市町村間や県間調整で12万トン分が積み上がり、差引き2万トン程度の減少として、「需給上は特段の支障はない」と説明しました。
これについて、全国米穀販売事業共済協同組合の木村良理事長は「生産減は2〜3万トンと見込んでいるが、これで済むのか。保管中に流失した分などが反映されていない。市場に対して、まちがいのない情報の公開を」と発言しました。
投機対象なんて
次に、東京穀物商品取引所と関西商品取引所の米の先物取引への上場申請について、農水省が説明しました。
これについては、JA全中から、米の先物取引が、戸別所得補償制度や米の需給と価格の安定を崩壊させるなどの理由で、反対の見解が出されています。冨士専務は「食糧価格の高騰や震災が発生しているなかで、投機的な先物取引を検討すること自体が大問題だ」と批判しました。
さらにJA全国女性組織協議会からも「私たちは、消費者のために米作りをしているのであって、『先物』という投機の対象となる商品を作っているわけではありません。投資家の思惑によって価格が左右されることは、絶対に受け入れられない」とする「意見書」が出されています。
国は需給と価格の安定に責任を
今回の食糧部会で東日本大震災後の米の状況が示されましたが、「主食の米は間に合うのか」という国民の不安に応えるには程遠いもので、政府の姿勢が鋭く問われています。
昨年秋、わずかな米の過剰から米価が暴落し、「備蓄米の買い入れで米価の安定を」との声が高まりましたが、政府はこれを拒否してきました。
このため民間レベルで、集荷円滑化対策の農家拠出金を活用して、17万トンをエサ米に処理する対策を実施し、ようやく米価の下落に歯止めがかかりました。
ところが、政府はその米を主食用に転用することをもくろんで、エサ米への処理をストップさせています。もともと11年産の生産目標数量は需要量(802万トン)を下回る795万トンの設定で、今や、その計画すら危うくなったことを示しています。
政府の需給計画に不安を抱く米業者は10年産の米を積み増す動きを強め、業者間の取引価格は震災前に比べて20〜30パーセントも暴騰しています。
農民連などが主張するように、ゆとりある需給計画を立て、仮に過剰米が発生しても「需給と価格の安定に国が責任を持つ」当たり前の米政策に今こそ転換をはかるべきです。
(新聞「農民」2011.6.13付)
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