「農民」記事データベース20110606-975-03

牧草の放射能汚染深刻

代替飼料確保・早期賠償を

関連/今年度第1次補正予算成立 農林水産復旧対策3817億円


福島・茨城・群馬の酪農家が農水省交渉

 原発事故の影響で、牧草から高濃度の放射性物質が検出され、収穫できないという事態が相次ぎ、酪農家は代わりの飼料をどう確保するか、苦慮しています。被害は福島県だけでなく、茨城県、栃木県、群馬県、千葉県、岩手県など、東北・関東地方にも広がっています。

画像 農民連と畜産農民全国協議会(畜全協)は5月20日、除染対策や代替飼料の確保、損害賠償の早期支払いなどを求めて、農水省と交渉しました。福島県酪農業協同組合連合会の阿部正一副組合長や農民連前会長の佐々木健三さんら、福島、茨城、群馬の酪農家ら15人が参加しました。

 牧草の損害賠償問題では、農水省の担当者が「実害なので、当然賠償の対象になると考えている。原子力損害賠償請求審査会の『第2次判定指針』に盛り込むよう要請している」と回答。代替飼料の確保対策では、「粗飼料の融通しあえる量を各県に調査するよう依頼している」「運賃補助は第2次補正予算に盛り込む」、「基準値を超えた牧草を牛に給餌(きゅうじ)してどのような影響が出るか、調査している」などの回答がありました。

 酪農家からは「20〜30キロメートル圏内の酪農家にはモニタリングすらされておらず、牛乳の出荷のめどがまったく立たない」「死亡した牛は自分で埋めろというが、どうやってやるんだ」「汚染された牧草はわが家だけでも500キログラムロールで1000本もある。どうやって処理すればいいんだ」など、切実な実情が訴えられました。

 第1次補正予算で不十分ながらも一定の対策が打ち出されましたが、原発被害については「東電に一義的責任がある」として政府の対策は何もなく、そのしわ寄せが生産者に押し付けられています。原発の「安全神話」とはこれほどひどいものかと、改めて思い知らされた交渉でした。


今年度第1次補正予算成立
農林水産復旧対策3817億円

本格復興にむけ切実な要求相次ぐ
早急に第2次補正の提出を

 東日本大震災の復旧対策などを盛り込んだ2011年度第1次補正予算案(4兆153億円)が成立しました。主な対策は、仮設住宅の建設やがれきの撤去、中小企業や農林水産業への支援など。このうち、農林水産関係は3817億円です。

 第1次補正予算のうち、被災して営農ができなくなった農家に、経営再開に向けた支援事業を始めます。復旧作業を共同で行う農業者に対して、水田の場合10アールあたり3万5000円、露地野菜が4万円、施設野菜が5万円、果樹が4万円、畜産では乳用牛で1頭あたり2万9700円、肉用牛繁殖で18万2200円など支援金を支払います。また死んだ家畜を早急に処理するため、処理費用の半額を助成します。

 土地改良法の特別立法で、津波で塩害を受けた農地の除塩事業(国が9割補助)を創設します。しかし、すでに個人で除塩に取り組んでいる農家も多く、十分な対策が求められます。

 被災したハウス、ライスセンターなどの農業用施設や、津波などで失った農業機械、肥料、農薬などの営農用資機材、放射能の土壌分析などを対象に、都道府県に交付金を支給します。しかし、事業費の半額までです。また天災融資法が発動され、これまでは低利の融資でしたが、今回はじめて無利子にしました。しかし、トラクターやコンバインなど高額な農業機械を津波で流された農家の中には、借金を抱えたままの農家もたくさんいます。あらたな借金による“二重ローン”では、とても農業を続けることはできません。

 第1次補正予算は、必要最低限の応急措置です。被災地からは、農地のがれきやヘドロの除去、用排水路の復旧、債務凍結など、農家負担のない本格復興に向けた切実な要求が相次いでいます。菅内閣は、早急に第2次補正予算案を国会に提出すべきです。

(新聞「農民」2011.6.6付)
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2011年6月

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