6月1・2日 全国公害被害者総行動
実行委員会事務局長 中山裕二さんに聞く
関連/第36回全国公害被害者総行動
今年で36回目を迎える全国公害被害者総行動が6月1・2の両日、東京都内を中心に行われます。未曽有の被害をもたらした東日本大震災・福島原発事故のもとで行われる今年の総行動は、原発事故の被災者との連帯が大きなテーマに掲げられています。なぜ公害運動が被災者との連帯に取り組むのか――同実行委員会事務局長で、「水俣病被害者の会全国連絡会議」事務局長でもある中山裕二さんに聞きました。
原発事故と公害の被害者
連帯して運動すすめよう
原発事故の対応水俣病と酷似
原発事故後の東電の対応は、水俣病が発生した時の加害企業だったチッソの対応ととても似ています。その一つは、自らは危険性を知りながら住民・国民に知らせないという「情報の不開示」です。また、「現時点で健康被害はおきない」として、情報を公開しないことで、被害を小さく見せようともしています。
もう一つは、国策との関連です。原発も国策として進められてきましたが、チッソは終戦直後、食糧難で肥料生産が至上命題になっていましたし、その後は石油化学コンビナート地帯(千葉県)に工場を移転するために、水俣市の工場はもうけるだけもうけたら、後はつぶしてしまおう、という経営方針がありました。チッソ自身が行った「ネコ実験」で工場廃水が原因であることを承知していながら、垂れ流していました。
賠償責任でも公害運動と通じる問題があります。公害運動は、 「環境対策費用は汚染の原因者が第一義の負担者であるべき」という「汚染者負担の原則」に基づいて運動してきました。しかし水俣病の場合では、水俣病特別措置法を制定して、チッソを分社化し、事業を引き継ぐ新会社を設立。チッソ本体は、事業を行わず水俣病の後処理をするためだけの会社になりました。つまりチッソが加害企業としての責任をまっとうしないまま、資金が不足した場合には、国の税金が入る制度になっているのです。
実はいま、東電も同じような仕組みを求めることを言い出しています。水俣病と原発事故は、発生前の国の政策、発生直後の対応、その後の補償にいたるまで、非常に似ているのです。
大気汚染の加害者でもある東電
原発は国策として進められてきたわけですから、当然、国が加害者として責任を負うことはたくさんあり、賠償金を出すことも当たり前です。しかしその前に、内部留保を吐き出すなど、まず東電自身がきちんと責任をまっとうすることが大前提です。
東電はこれまでも、住民の安全よりもまず“もうけ”にまい進してきました。東電は火力発電所を操業し、川崎など大気汚染公害の加害企業でもありましたが、その対応は非常に横柄で、役所以上に官僚的でした。電気料金の値上げや消費税率の引き上げなどの形で国民に負担を強いるのも筋違いだと思います。
水俣病の公害経験を生かして
原発事故の被害の点では、被ばくを最小限に止めるために、迅速な避難などが非常に大切だと思います。それから住民の方々の継続的な健康調査も重要です。この健康調査は、生涯にわたって手厚くしなければいけません。経年的な調査を前提に、今やるべきことを早急にしなければならないと思います。風評被害を含めて、今後の対応には、水俣病や他の公害経験を生かしていただきたいと思っています。
これだけの規模の放射線被害は、初めての経験です。いま起きている問題は、世界の国々に協力を求め、英知を集めて対応しなければなりません。このようなことを肝に銘じて今回の公害被害者総行動に臨みたいと思います。
▼6月1日 正午からデモ行進(日比谷公園霞門)、各省交渉後、午後6時から決起集会(日比谷公会堂)
▼6月2日 財界団体・各省交渉後、正午からまとめの行動
(新聞「農民」2011.5.30付)
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