「農民」記事データベース20110530-974-03

TPP交渉参加先送り

民主党政権 昨年11月の基本方針変えず

関連/風評被害はれっきとした損害


 菅内閣は5月17日、東日本大震災後の政策運営を定めた「政策推進指針」を閣議決定しました。そのなかで、TPP(環太平洋連携協定)交渉へ参加するかどうかを決める時期を「6月まで」としていたこれまでの基本方針を変更して、「総合的に判断する」との表現にあらため、事実上先送りしました。

 例外なき関税撤廃をめざすTPPは、日本の農業と地域を崩壊させるものであり、被災地を復興しようという懸命の努力を押しつぶすものです。しかし菅首相は記者会見で、「昨年11月に決めた基本方針は変えない」とも述べています。TPPへの参加そのものを断念させるために、さらに運動を強めましょう。


風評被害はれっきとした損害

原子力損害賠償紛争審査会 苦しい実態顧みない発言も次々

 福島第一原発事故に伴う損害賠償の判定指針をつくる政府の原子力損害賠償紛争審査会は、5月16日、4回目の会合を開きました。4月28日に発表された「第1次指針」では、避難や農作物の出荷制限など政府の指示によって発生した被害のみが賠償判定の対象で、風評被害を含む営業損害などについては「第2次指針」以降で策定することになっています。

 今回の審査会では、「第2次指針」作成に向けた主な論点(以下「論点」)が示されたほか、農林水産など17の分野ごとに3〜4人の専門委員を文科相が任命し、被害の実態調査を進めることが了承されました。

 「論点」では、風評被害について「消費者の買い控えや取引停止などによる被害について、原発事故と相当因果関係の認められるものであれば賠償の対象となる」とし、「風評被害という表現は、(中略)危険性がまったくないのに消費者・取引先などが危険性を心配して購入を回避する不安心理に起因する損害であるかのような意味で使われることもあるが、むしろ科学的に明確でない放射能の影響を回避するための市場の拒絶反応であると考えるべき」と明記しています。

 審査会の能見善久会長(学習院大学教授)も意見交換のなかで、「(風評被害による損害は)根も葉もない損害ではなく、れっきとした営業損害の一部であり、その連続的なものである」と述べており、風評被害の認定については、わずかながらも前進が見られる点が、注目されます。

 しかし意見交換では、「賠償指針がつくられることで、作付け断念がすすむのはいかがなものか」、「出荷停止の指示を故意に聞かない農家がいても現行法ではおとがめがなく、こうしたことが風評被害を広げている」など、農民が直面している苦しい実態をまったく顧みない意見も多く、今後の推移を注視する必要があります。

(新聞「農民」2011.5.30付)
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2011年5月

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