沖縄
未承認のGMパパイア流通
出荷停止・価格暴落 農家大打撃
沖縄県内で販売されたパパイアから昨年、未承認の遺伝子組み換え(GM)が確認され、いま大問題になっています。農水省が調査した結果、那覇市内の種苗会社で収集した品種「台農5号」の種子からでたものであることがわかりました。GMパパイアが市場に出回ったことで、「台農5号」の出荷はストップし、それ以外のパパイアも価格が暴落。農家は大打撃を受けています。
国・県は損害補償せよ
県内のパパイアの栽培面積は約21ヘクタール(生産農家75戸)。このうち「台農5号」は全栽培面積の約2割、半数以上の35戸が栽培しています。
「台農5号」は野菜パパイアとして、サラダやいため物などに利用されています。県は、農林水産部の発行物で「台農5号」の作付けを奨励し、「栽培指針」でも「野菜パパイアの代表格」とアピールしてきました。
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沖縄名産のパパイア |
遺伝子組み換えが検出されたことを受け、国と県は該当するパパイアを伐採し、代替の苗木を配布することにしていますが、補償は今のところ、これだけです。今回の組み換え遺伝子は、台湾で研究中のGMパパイアと共通のDNAをもっていることから、台湾で研究中のGMパパイアが混入した可能性が強いことがわかりました。台湾でも作付けや流通は許可されていません。
ところが内閣府の食品安全委員会は2009年にGMパパイアについて「安全」と評価し、まもなく食卓にのぼる予定でした。これまでGM作物は、トウモロコシ、ナタネ、大豆、綿の4品目しか日本に入ってきませんでした。新たにパパイアが加わり、初めて生で食べるGM食品となります。
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大城浩明さん(右)からパパイアの現状を聞き取る赤嶺政賢さん(中央)と松田兼弘・南城市議 |
沖縄農民連の大城一雄事務局長は、日本共産党の赤嶺政賢衆院議員をはじめ、同党県議団などとともに、パパイア農家を訪問し、被害の状況や要望を聞いてきました。
大城事務局長は「県は、『台農5号』の生産を奨励した立場から、農家に経済的損失を補償し、国にも補償を求めることが必要です。生産農家が安心して生産に励めるよう、支援していきたい」と話しています。
ウイルス抵抗性強めた新品種
遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン代表・天笠啓祐さん
これまで日本に輸入されてきた遺伝子組み換え品種は、除草剤耐性と殺虫性の2種類でしたが、このGMパパイアにより、新たにウイルス抵抗性が加わります。GMパパイアは、アメリカ・ハワイで作られており、パパイヤ・リングスポット病という、輪状に斑点が出る病気を引き起こすウイルスの遺伝子を導入し、それへの抵抗性を強めたものです。
GMパパイアは1999年に輸入申請が出され、安全審査が始まりましたが、なかなか進展しませんでした。その最大の理由が、安全性への疑いです。特にアレルギーを引き起こす可能性が指摘されています。
なぜ流通したのか、原因を早急に解明する必要があります。
また、今回はGM作物によって経済的損失が生じた初のケースです。昨年10月のMOP5(カルタヘナ議定書第5回締約国会議)で採択された「名古屋・クアラルンプール補足議定書」の「責任と修復」のルール、つまり、GM作物によって被害が生じた場合に、損害を与えた企業に補償を求めることが決まりました。
その初めての適用となり、MOP5の成果が問われる事例で、大いに注目しています。
健康野菜のひとつ安心できる対策を
南城市でパパイアを30年間作り続けている大城浩明さん(58)
パパイアは6、7月が出荷の最盛期で、農家の落胆はとても大きいです。国は水際で止めるべきでした。消費者が「台農5号以外も遺伝子組み換えでは」と不安に思い、パパイアを敬遠することを心配しています。パパイアは、健康野菜として、沖縄の食文化の一角を担っており、私たちも消費者の健康保持を考えて生産に励んできました。国と県は、出荷できない分と、伐採するまでの栽培管理や肥料にかかる費用を補償すべきです。県民が安心してパパイアを食べられるよう万全の対策をとってほしい。
(新聞「農民」2011.5.30付)
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