「判定指針づくり」を討論原子力損害賠償紛争審査会 初会合
全面的な賠償求める意見出ず原子力損害賠償紛争審査会(以下、審査会)の1回目の会合が4月15日、文部科学省で開催されました。メンバーは、法学、医学の学識者や、原子力分野を研究している高度情報科学技術研究機構の会長など10人。審査会は、会長に学習院大学法学部教授の能見善久氏を選出。つづいて東京電力や各省庁から被害の現状について説明を受けました。 農水省は、「野菜や原乳の出荷停止や、価格下落、取引忌避が広がっている」などと詳細に説明しました。 能見会長は「この審査会で当面やらなければならないのは、賠償範囲を判定する指針をつくること」と強調し、討論に入りました。 各委員からは「住民は移動や避難生活によって失業したり、困窮したりしている。一刻も早い賠償金の支払いが必要だ」「精神的苦痛にも補償すべきだ」などの意見が出される一方で、「風評被害の範囲をどこまでとするか、判断が難しい」「過払い(損害実態以上に賠償金を受け取る)ことがあってはならない」などの意見が続出。「原発事故に起因する損害は、すべて賠償されなければならない」と強調する意見は、ほとんど出されませんでした。 審査会は最後に、7月までに「指針」を取りまとめることを確認しました。
賠償問題農林水産関係者で「連絡会議」東電 仮払いには全く触れず第1回原子力損害賠償紛争審査会の開催を受け、農水省は4月18日、農林水産関係者で原子力損害への賠償について意見交換する「連絡会議」の初会合を開きました。現在「連絡会議」には、福島、茨城などの5県と、農林水産業や食品産業などに関連する95団体が参加。賠償紛争審査会や政府の経済被害対応本部での議論など、賠償請求に関する情報の共有を目的に、今後は審議会の開催にあわせて、「連絡会議」も開かれる予定です。 会場は参加団体の代表者と傍聴者で満席となり、怒りと危機感に満ちた意見が続出しました。 東京電力の役員は、原発事故で「広範な方々にご迷惑をおかけした」と陳謝しましたが、賠償金の支払いについてはまったく触れずに説明を終了。「とにかく一刻も早く仮払いするべきだ。いったいどう考えているのか」(JA全中)など、一刻も早い仮払いを求める厳しい意見が噴出し、東電はようやく仮払いに言及しましたが、「損害と補償の範囲を決めるのは、東電にはできない。審査会の指針の策定を待ちたい」と、すぐには応じない姿勢を崩しませんでした。 このほかにも、「農家は被害に苦しんでいる。原発事故の収束まで6〜9カ月かかるというのは、長すぎる」(福島県)、「東電は加害者としての自覚が足りないのではないか」(JA茨城)といった声や、「果樹も、もっとしっかり対策をとるべきだ」(日本果樹種苗協会)、「出船自粛など漁民の損害も賠償されるべきだ」(全国漁業協同組合連合会)など、広範な損害が報告されました。 農民連も「連絡会議」に加盟しました。
(新聞「農民」2011.5.2付)
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[2011年5月]
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