「農民」記事データベース20110425-970-01

液状化・陥没で水田ズタズタ

今年も米作りしたい

“続けたい”農家が9割も 千葉・香取

 “農作業ができない”―農家にとって、これ以上の苦しみはありません。放射能汚染で野菜を出荷することができず、涙を流す農家。それだけでなく、米の主産地の宮城県や福島県では、津波による塩害ばかりか、放射能汚染によって田植えができず、今年の米の作付けが絶望的な地域があります。
 さらに農業用排水施設が全国で380地区、約349億円(4月13日現在)という甚大な被害を受けています。農水省は田植えに間に合うよう、応急仮工事や査定前着工などの緊急対策を講じていますが、早期改修とともに生産調整数量の見直しを行うべきです。


用排水施設と耕地の復旧へ支援
作付け不能の農家に補償を

県と香取市長に 県農民連が要請

 千葉県内でも有数の米どころ、香取市の佐原地域は豊かな水郷地帯ですが、東日本大震災により、水田は大打撃を受けました。田植えシーズンを間近に控え、「今年も米作りがしたい」と、農家の願いは増すばかりです。

 「震災直後は、液状化で水田は水浸し。今では水は引きましたが、田んぼはでこぼこになり、砂場のようです」。佐原農民組合副会長の林縫右衛門さんは自らの田んぼを前にため息をつきます。

 沈下した畔(あぜ)は、田んぼと同じ高さになり、あちらこちらで蛇行しています。「もうすぐ田植えが始まる。今年は作付けができるかどうか…」

 この地域は、利根川から水をくみ上げ、周辺の田んぼに供給しています。しかし震災で水門は壊れ、水をくみ上げることができません。しかもパイプラインの破損で水が送れない状況です。

 市は県とともに、被害状況を把握し、査定するために田んぼを回っています。その間、田んぼに手を加えることはできません。「水も来ないし、手をかけられない。いったい何をしたらいいのか」と戸惑うのは宮本正男さん(73)。「ブルドーザーを入れて、田んぼを平らにするのに1ヘクタールあたり6万円かかるといわれている。米価が低いうえに、作れない間も借金がかさむ。離農に拍車がかかるのでは」と心配します。

 市によれば、今年度の作付け不能面積は約2500ヘクタール。収量に直すと1・4万トンも減になる見込みです。作付け不能による農業生産の損害額は約28億円にのぼります。

 それでも、「このまま手をこまねいて、米作りをやらないわけにはいかない。雨が降ってくれることを願うしかないのか」と苦笑するのは、16戸の農家を束ねる境島実行組合の香取正利組合長(52)。「作らなくても用排水路や農道の管理費がかかってくる。とりあえず作って、だめだったら補償してもらおうか」と語ります。香取組合長によれば、震災直後は「米作りを続ける」と言っていた農家が1割ほどしかいなかったのに、いまでは9割の農家が「作り続けたい」といいます。

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液状化ででこぼこになり沈下した畔を指さす林さん(左)と香取農民組合の香取さん

 千葉県農民連などは4月8日、香取市の宇井成一市長に対し、震災による水田施設と崩壊した耕地の復旧に加え、原発による災害補償を国・県に要請するよう求めました。

 宇井市長は「今年も農家のみなさんに作付けしてほしい。国・県に要望したい」と答えました。

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宇井・香取市長(こちら向き左から2人目)に申し入れる千葉県農民連

 また、千葉県農民連は15日、県に同様の申し入れを行いました。

 北総農民組合の香取和典組合長は「水田の復旧、作付けについての情報を急いで農家に知らせ、作付け不能な農家に対しては生産に見合う補償を求めたい」と話しています。

(新聞「農民」2011.4.25付)
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2011年4月

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