放射能測定せず出荷停止
厚労省に緊急要請 “納得できぬ”農民連抗議
千葉・旭市のホウレンソウ
政府の原子力災害対策本部は4月4日、千葉県旭市で生産されたホウレンソウ、シュンギクなどを出荷停止とするよう、千葉県知事に対して指示を出しました。しかし農民連本部がこの件に関して4月5日に厚労省に問い合わせたところ、ホウレンソウについては、その根拠となる放射性物質の測定が行われていないことが判明。農民連は4月6日、急きょ、厚労省に出荷制限をただちに撤回することなど緊急要請を行いました。
笹渡義夫事務局長は、「測定もしていない品目が出荷停止になるのは、生産者としてはとうてい納得できるものではない。根拠となるデータを示してほしい」と要求。厚労省は、「今回の出荷制限は、原子力災害対策特別法に基づくもので、他の作物で基準値以上が測定されていれば、地域性を考慮して、出荷規制の対象となりうる」と回答しました。
旭市の生産者を組織している房総食料センターの椎名二郎さんは、「それでは納得できない。枝野官房長官が4月4日の記者会見で、“規制の設定、解除とも県単位ではなく市町村単位にする”と、方針転換を発表しているではないか。出荷規制は測定もされずに設定されて、解除するには市町村単位で検査しろと言うのか」と抗議しました。
厚労省は、「たしかに矛盾がある。皆さんのご意見は、出荷規制を決める災害対策本部に届ける」と述べ、一連の対応に一貫性がないことを認めました。
また、多古町産のホウレンソウが2回目となる3月30日の千葉県の測定では基準値以下だったのに、4月4日になって出荷停止にしたことを追及。厚労省は、「4月4日から3回連続して基準値を下回れば解除する方針。多古町の3月30日の検査は1回目の測定にあたる」と答弁しました。これに対して、「直前の検査結果を無視して出荷停止にしたことは到底、認められない」と抗議。厚労省は、「重要な意見なので対策本部に伝える」と約束しました。
厚労省はこのほかにも、出荷停止が出されている茨城県、千葉県などでも、いまだに多くの市町村で放射性物質の測定が行われていないことを明らかにし、「より広範に測定していく必要がある」と認めました。笹渡事務局長は、「大至急、綿密な測定を実施するべきだ」と、改めて要求しました。
椎名さんは、「東京電力と国が賠償内容をきちんと明言しないことが、混乱を大きくしている。農家は損害の証拠をしっかり集めて、東電と国に要求していく必要がある」と話しています。
(新聞「農民」2011.4.18付)
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