「農民」記事データベース20110411-968-05

無謀なTPP参加やめよ

関連/TPPのこと よくわかった


 東北・関東を襲った震災は、命の礎である食料の確保がかけがえのない課題であることを改めて浮き彫りにしました。農水省は、TPP(環太平洋連携協定)に参加し、農産物の輸入を完全に自由化した場合、食料自給率が40%から13%に急落し、米生産は9割減ると試算していますが、避難所で寒さに震え、おなかをすかしている被災者の惨状を見るにつけても、TPP参加の無謀性は明白だといわなければなりません。

 輸入ストップの時のメニューは

 農水省は、食料自給率40%の現状で輸入がストップした場合の食事メニューを次のように試算しています。つまり、ご飯は朝・夕に1杯だけ、昼は焼き芋、おかずは漬けものと焼き魚1切れ、みそ汁とうどんが2日に1杯、卵と肉は7〜9日に1回……という究極の栄養失調メニューです。

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 宮城県のある避難所では、3月12日から3月20日まで1日1〜2食という状態が続き、21日からやっと3食になりましたが、朝はパンとシーチキン、昼はカップラーメンとりんご半分、ドーナツ1個、夕食はおにぎり1個と魚肉ソーセージでした。

 もちろん、これは震災直後の緊急事態のもとでのことですが、問題なのは、農水省が描く“窮乏メニュー”が避難所の食事とほとんど変わらないことです。

 おまけにTPPに参加すれば、自給率は13%、米生産は1割しか残らない! 大震災が起きたり、輸入がとだえれば、このメニューでさえ“ぜいたくメニュー”ということになるでしょう。

 もちろん、輸入途絶は極論だという批判もありえます。しかし、直視しなければならないのは、昨年秋以来、農産物の国際価格が高騰を続け、年明けには史上最高になり、なお記録を更新していることです。

 暴動か移民か死ぬかの選択肢

 食料援助を担当する国連機関「世界食料計画」のジョゼット・シーラン事務局長は「世界は食料不安と供給崩壊の時代に入りつつある。もし人々が十分な食事が得られないなら、選択肢は三つしかない。それは暴動を起こすか、移民するか、死ぬかだ」と警告しました(ロイター、2011年2月3日)。中東・北アフリカで起きている激動の引き金になったのは、パンの暴騰だったことは明らかですし、悲惨なことに飢餓難民と飢餓死は日常茶飯です。

 極めて底が深いいまの食料危機

 食料危機の背後には、投機資本の暗躍や食料を燃料に転換するバイオ燃料の拡大があります。こういう人為による危機をきびしく抑え込む措置をとるのは当然必要ですが、昨年から今年にかけて起きている危機は、もっと底が深いといわなければなりません。

 つまり、オーストラリア、ロシア、南米など、アメリカと肩をならべる農産物輸出大国での干ばつと洪水が危機の引き金になっており、加えて世界最大の小麦生産国である中国が200年来といわれる干ばつに見舞われ、日本の総農地面積の1・5倍にあたる小麦畑の収穫が危ぶまれています。

 全く無頓着なTPP推進戦略

 こういう動向にまったく無頓着に「開国」を叫び、昨年3月に自給率を40%から50%に引き上げることを決めた「食料・農業・農村基本計画」をホゴにして、13%に激落する可能性のある選択肢を選ぶところに、TPP推進戦略の「壊国」「売国」ぶりがあります。菅首相は、この期に及んでも「震災対策の方向性が見えたなかで、あらためて(TPP参加を)検討する」などと答弁していますが、いまこそTPP参加の検討そのものを中止すべきです。
(真嶋良孝)


TPPのこと よくわかった

茨城 取手革新懇が考える集い

 茨城・取手革新懇(平和・民主・革新の日本をめざす取手の会)は3月5日、「TPPを考える集い」を開き、140人が参加しました。パネリストは、茨城農民連の村田深さんのほか、元弘前大学教授の森川辰夫さん、JA茨城統括部長の秋山豊さん、医師の石井啓一さん、常総生協の大石光伸さんの5人。

 参加者から、「パネリストの話がとてもわかりやすく、TPPのことがよくわかった。TPP反対で多くの方が力を合わせていける」「TPPに参加したら、ひどい日本(今もひどいが)になることを改めて認識した。政府いいなりのマスコミを何とかしないといけない」「子どもとまだ見ぬ孫の未来に不安を感じる」「TPPの問題を逆に取り上げ、農林漁業が自活できるような運動を展開すべきだ」など、多数の感想が寄せられました。

(新聞「農民」2011.4.11付)
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2011年4月

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