「農民」記事データベース20110411-968-01

東日本大震災

人災・原発事故に立ち向かう福島県農民連

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 東日本大震災がもたらした東京電力福島第一原子力発電所の事故による放射能被害が心配される福島県。原発事故が生活復興への足かせになっているもとで、福島県農民連は農家の不安に応えて、放射能問題を正しく理解し、県に対しても農家の立場で対策をとるよう要請するなど、困難な問題に立ち向かっています。
(勝又真史)


風評被害・出荷停止・作付け自粛
農家まかせにするな

 県の通知にとまどい

 県は3月25日、「農産物等に関する農業技術情報」を出しました。農家に対して「県内の土壌の状況については、国と連携をはかりながら放射能濃度の分析を実施する予定です。各作物の作付けや栽培管理については、その結果等を踏まえて判断してください」と通知。「当面は耕耘(こううん)をしない。播種(はしゅ)時期も通常より遅らせる」(水稲)、「すき込みや焼却はしない。収穫していないものはそのまま放置を」(野菜)などと呼びかけています。

 問題なのは、県は補償問題をはっきりさせず、作付けの判断は農家任せになっていることです。

 野菜農家で、屋根がわらが一部崩れるなどした青田真一さん(相馬市)は「ナスやトマトの苗は3センチほどに育ち、間もなく定植のはずだった。何から手をつけたらいいのか」と県の通知に戸惑います。

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原発事故への不安を訴える青田真一さん(右から2人目)とミヨさん(同3人目)

 妻のミヨさんは税金の申告に行っているときに地震にあいました。「申告で外出していたことで難を免れました。農民連に助けられました」と笑いつつも、「放射能は目に見えないし、初めてのことだから不安だらけです」と表情を曇らせます。

 青田夫妻は「今まで通り作付けする準備をしています」と決意しています。

 福島県連は26日、事務所で、放射能問題に詳しい琉球大学名誉教授の矢ケ崎克馬さんを招いて学習会を行いました。

 独自に測定器で調査

 さらに27日には、自ら用意した放射能測定器を携えて、二本松市の田んぼと福島市の果樹園などを訪問。耕起前の田畑の数値が耕起後よりも高く、放射性物質が滞留しているとみられる結果が出ました。これは、「地表面の放射性物質を拡散させないために耕耘はしない」という通知を裏づけるものでした。

 検査に立ち会った農家は「作付けできない場合の補償はどうなるのか」「栽培できてもできなくても、農薬や資材など作付けの準備は進めなくてはいけない」「風評被害を受けた場合の補償はしてくれるのか」など不安の声が出されました。

 放射能による風評被害は大問題です。県内のJAによれば、通常300円くらいで取引されている福島県産イチゴが35円しか値がつかないとのこと。被害が現実化しています。

 県に緊急申し入れ

 福島県農民連は28日、県に緊急の申し入れを行いました。(1)原乳を出荷できずに廃棄している酪農家に、補償と原乳処理の手立てを直ちに行うこと(2)出荷停止になりそのままになっている野菜等の処理を国の責任で行うこと(3)県の通知にみられるような生産者に判断をゆだねる表現はやめ、県が栽培に責任ある判断と指示をだすこと―などを求めました。

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県に対策を要請する福島県農民連の根本事務局長(中央)

 県農民連の根本敬事務局長は「国も東京電力も被害との間に因果関係があれば補償すると述べている。県としても、『補償される』点を農家に周知徹底せよ」と強く求めました。


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(新聞「農民」2011.4.11付)
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2011年4月

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