東ティモール農協づくり視察して
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歩みはじめた農業協同組合
東ティモールの憲法第138条では、「協同組合ならびに社会セクター」が明記され、独自の経済活動の形態として重要性が認められています。その位置づけは、非政府(NGO)・非営利(NPO)と民衆参加が特徴です。この憲法にもとづき2004年10月に制定された協同組合法では、国際協同組合原則の全文を掲げ、協同組合のアイデンティティー(自己証明)を確認しています。しかし、政府が推進する日常の運営指導は、資本金強化を中心とした信用事業が重点です。
6カ所訪ねて
現地では6カ所を訪ねましたが、すでに認可・登記ずみの農協は2つ。その一つの山岳部のコーヒー地帯にあるレテフォホ農協は、2010年1月に32人の組合員で設立し、7月には登記を完了、現在は組合員104人という急成長ぶりです。地元中学校の校長など有力者が役員に就任し、強力なリーダーシップが発揮されています。
同じ地区にあるタタマイラウ・コーヒー生産者グループ(1999年発足)は、234人のメンバーが日本のNGOの支援を受けて品質改善に取り組み、日本向けフェアトレードを発展させています。しかし、新設のレテフォホ農協との統合は望んでいません。
もう一つは、東部の水田・漁業地帯にあるバウカウ県ラガのサルゲイルス農協(2008年発足)。
この農協は稲作を個別農家で行うだけでなく、組合員の共同でも取り組んでいます。農協を通して共同販売した米代金から、農協が手数料として15%差し引き、残りを組合員に支払っています。
また、登記申請中のアイナロ県マウベシ農協(通称コカマウ)は、2004年からPARCICを通じて日本向けコーヒー(年間54トン)のフェアトレードを進めています。200人のメンバーが11のグループに分かれて第1次加工まで実施。なかでも女性グループは、独自にハチミツやハーブティーなど食品加工にも取り組んでいます。
登記意向なしのグループのなかには、エルメラ県のサココ青年開発グループのように、土地闘争を通じて、住宅建て直しプロジェクトやコーヒー代金から返済する生活資金貸付制度の創設など、多様な活動に取り組んできた組織もあります。
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楽しみながら収入を増やすマウベシ組合女性加工グループ |
発展のために
東ティモールの農協活動は、まだ始まったばかりです。今後の発展のために、(1)これまでのプロジェクトの成果を新たな農協づくりに生かすこと、(2)既存のコミュニティーにおける住民の協同組織を踏まえて農協を発展させること、(3)経済事業を通じて多くの住民参加を実現するためには多額の出資金積み立てが高いハードルになっていること、(4)女性のエネルギーを活動に生かすことなどを助言しました。
(おわり、山本博史)
(新聞「農民」2011.4.4付)
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