10年産備蓄米の買い入れ
超低価格、1万300円!?
生産費償う価格で全量買い入れを
農水省は2010年産の備蓄米買い入れ入札の1回目を2月4日、2回目を2月23日に実施しました。1回目は産地や業者の売り渡し希望がありながら、全量不落札に終わり、2回目の入札でようやく3万4000トン余りが落札しました。
業界紙は「1回目は1万300円でも不落札」「2回目は1万290円前後で落札」と報じ、予定価格は1万300円前後に設定されているもようです。生産費はもとより、市場価格をも大幅に下回る価格で備蓄米を買い入れる農水省の姿勢が大きく問われています。
今回の買い入れ入札は、18万トンの枠で全国一本の予定価格(非公表)を設定し、価格の安い順に枠いっぱいまで落札する仕組みで、予定価格は直近の相対取引価格を参考に設定するとしています。
直近の相対価格は1万2105円(2011年1月、税別)です。予定価格が1万300円程度とすれば1800円も下回ることになります。実際の生産費1万6547円(07〜09年平均)と比べれば6000円以上も下回ることになります。
あまりの安さに売り手も売り渡しをあきらめ、「目標の18万トンには届かない」との声も聞かれます。今回の買い入れ分は棚上げ備蓄に充当することになりますが、こうした買い入れの仕方では、国民の主食の安定供給に責任が果たせるとはとうてい思えません。
農水省が米価暴落を放置するもとで、集荷円滑化対策の農家拠出金を活用した民間による17万トンの市場隔離でようやく米価下落に歯止めがかかり、コシヒカリなど一部銘柄が回復に向かっています。今回の備蓄米買い入れで米価全体の回復が期待されましたが、農水省自ら米価下落を誘導する姿勢に、米価の先行きはますます不透明になろうとしています。
最終の入札となる3回目は3月8日。残された14万5000トンの枠で実施されますが、政府は生産費を償う当たり前の価格で全量買い入れを行うべきです。
棚上げ備蓄米(11年産)入札始まる
10年産同様の低さなら問題
一方、新たな棚上げ備蓄方針(注)にもとづく2011年産の備蓄米買い入れ入札も始まりました。20万トン弱の枠で播種(はしゅ)前に契約を済ませ、その数量は生産目標数量の枠外の扱いとされます。予定価格は「民間取引の相対価格を基準として決定」とされていますが、10年産同様の低い設定なら、さらに米価下落を招くことは避けられず重大です。
棚上げ備蓄は農民連の長年の要求であり、不足時以外は市場に流さないという点では評価すべきです。しかし、作柄もわからない段階での契約で需給調整の役割がはたせるのか、生産費に見合う価格で買うのかどうかなど、さらに検証と改善が必要です。
(注)備蓄量を100万トンとし、不足時以外は販売を凍結。5年経過した米を毎年20万トンずつエサ米などに処分し、20万トンを新たに買い入れる。
(新聞「農民」2011.3.14付)
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