今こそ生産費を償う
乳価・畜産物価格に
畜産部会を前に―
畜全協と農民連農水省に要請
来年度の畜産物価格を決定する食料・農業・農村政策審議会畜産部会(3月下旬に開催)を前に、畜全協(畜産農民全国協議会)と農民連は3月1日、農水省に要請を行い、酪農、肉牛の農家が参加しました。
飼料高騰対策の強化と
国産飼料増産への支援を
森島倫生畜全協会長らは冒頭、「日本の畜産業に1兆7000億円もの大打撃を与えるTPP(環太平洋連携協定)に参加しないこと」、「感染拡大が深刻な鳥インフルエンザの発生防止と、被害の全額補償」を強く要求。このほか、加工原料乳の補給金引き上げや限度数量の拡大、乳価や食肉安定価格の引き上げ、国産飼料の増産、飼料価格の高騰対策、地産地消への支援など8項目を求めました。
猛烈にすすむ畜産農家の離農
重点要求である「生産費を償う乳価・畜産物価格にしてほしい」「乳価については、政府が価格形成に責任をもって関与してほしい」という要求について農水省は、「調査では昨年度は生産費も物価も下がっている」と回答し、乳価の引き上げを暗に否定。限度数量の引き上げも「そういう状況にない」と答弁しました。
森島さんは、「しかし乳業メーカーは現に高い経常利益を出しているではないか。いま危機を迎えているのは、畜産農家の方だ。飼料や資材が高騰するなか、畜産物価格は下がる一方で、北海道でも内地でも畜産農家の離農が猛烈にすすんでいる。この現状を農水省はどう考えているのか」と問いただしました。
|
農村と生産現場の苦悩を切々と訴える参加者 |
農水省は、「零細経営の多い日本農業のなかで、畜産は規模拡大が順調に進む“構造改革の優等生”だ。従来から価格形成には国は関与しない方針だ」と述べ、参加者に衝撃を与えました。しかし現場の厳しさを訴える声に、「来年度は飼料高騰も予測され、農家は厳しくなると思う。状況によっては、国が乳業メーカーや指定生乳生産者団体などに協議を呼びかけ、乳価を見直すことも含めて、対策を検討したい」と回答し、政府が乳価引き上げに関与する可能性を示唆しました。
飼料価格さらに高騰するきざし
また現在、世界の穀物価格が暴騰しており、4月以降の飼料価格がさらに高騰することが確実視されています。参加者は、高騰対策として配合飼料価格安定基金の活用など万全の措置を講ずることや、飼料自給率向上への支援強化を要請。「飼料稲やホールクロップサイレージなど国産飼料増産への支援を、長期的に行ってほしい」「飼料生産者と畜産農家の連携などに、もっと国が積極的に支援してほしい」などの声が上がりました。
北海道の肉牛農家は、「わが村では、08年以降の飼料高騰で3軒の畜産農家が破産している。肉用牛肥育経営安定特別対策事業(略称・新マルキン)の補てんは生産費の8割ではなく全額にしなければ、農家は生産が続けられない」と切々と訴えました。
(新聞「農民」2011.3.14付)
|