「農民」記事データベース20110307-963-08

茨城 鯉渕学園セミナーで体験報告

有機農業で新規就農する

青年3人が野菜づくりに挑戦

 2月5日、茨城県水戸市にある(財)農民教育協会・鯉渕学園農業栄養専門学校の主催で、「有機農業で新規就農する、その道をさぐる」と題するセミナーが開かれ、行政関係者や学生、農家など100人以上が参加しました。この中で、有機野菜づくりに挑戦している3人の青年農業者が新規就農体験を報告しました。その内容を紹介します。


都市より農村の生活に豊かさ感じた 堀口さん
消費者とともに「田んぼの会」作る 須崎さん
自分で考えて作業するのが楽しい  原田さん

 〈堀口 英之さん〉

 石岡市の掘口英之さん(35)は、学生時代に上総(かずさ)掘りで井戸を掘るというNGO活動でフィリピンを訪れ、そこで現地の農民の暮らしに刺激を受け、「農業をやってみよう」と決意。新規就農した先輩の下に通ううちに有機農業を知り、「東京で暮らし続けるよりも、農産物に囲まれた生活のほうが豊かな印象を持った」そうです。

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堀口さん

 就農して11年、280アールの畑で50品目の野菜づくりと20アールの水田、鶏250羽を飼っています。当初は、JAやさと有機栽培部会に全量出荷していましたが、いまはのべ200軒くらいの提携宅配です。

 土作りは、鶏ふんを発酵させたボカシ肥が主体で、イネ科・マメ科の緑肥を投入しています。悩みは、「どうしたらお客にやめてもらわないか。ボックスの質の向上が第一」と言います。そのためには、1年を通じた安定生産が欠かせません。これからは、「しっかり届けていかなければという気持ちがじんわり湧(わ)いてきた。そのために何をしなければならないのか、考えるようになった」と、抱負を述べました。

 〈須崎 拓志さん〉

 東海村の須崎拓志さん(28)は、東京でミュージシャンとして活動していましたが、音楽では生活できず、たまたま北海道の酪農家で手伝いしたことが転機になったそうです。「農家の暮らしはシンプルで豪快。地に足を着けた生き方を見て、消費する生活から生産する生活に変えよう」と、就農を決意。紹介してもらった農家が有機農業をしていたことから、「これでやってみよう」と、6年前に故郷の東海村にもどって農業を始めました。しかし、なかなか農地が見つからず、家探しはもっとたいへんでした。

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須崎さん

 160アールの畑で40品目の野菜を作り、水田は40アール。口コミで広がった60軒の提携宅配と地元のレストラン、直売所などに届けています。「有機物を投入して畑を肥やし、不足養分を有機肥料で補うやり方。輪作と旬をはずさない型であれば、病気が大発生することはない」と言います。

 消費者とともに農作業しながら米づくりをする「田んぼの会」を立ち上げました。これは、消費者にも自分の食べる米は自分で作ることの大切さ、そして収穫の喜びを味わってほしいと思ったからです。須崎さんは、「普通の人はふれることさえない有機農業についても、身近に感じてもらえれば」と話しました。

 〈原田 悠士さん〉

 水戸市の原田悠士さん(25)は、就農してまだ1年。動機は「農業は栽培から経営を考えると奥が深く、自分で考えて作業するのが楽しい」から。農業法人で6年働き、鯉渕学園で1年研修しました。就農にあたって一番たいへんだったのは、住む家と農地探し。220アールの畑で約50品目の野菜を作っています。販売先は、60軒の宅配と生協の店舗や直売所、レストランなど。土づくりでは、普及所に土壌分析してもらって、米ぬか、近所の畜産農家から購入したたい肥、緑肥を使用しています。「農業以前に、普通のことをキチンとできるように心がけている」という原田さん。奥さんといっしょに都内の公園などで開かれるイベント販売にも力を入れています。

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原田さん

   苦労は家と農地探し
 コーディネーターを務めた鯉渕学園の涌井義郎教授(食農環境科)は「新規就農にあたって一番の苦労は、共通して家や農地の確保だった。行政やJAなど小さな窓口、身近な相談役が求められている」と課題をあげ、「有機農業を通じて、生産者と消費者の輪が広がってほしい」と結びました。

(新聞「農民」2011.3.7付)
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2011年3月

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