農協 経済事業自立への課題
規制・制度改革分科会「中間とりまとめ案」の問題点
経済事業の分析手法は?
経済事業と信用・共済事業の分析手法では、どのような関係になっているのでしょうか?
矛盾を含む現行の分析方法
いま実施されている経済事業の分析手法では、共通管理費をどうやって部門別に負担するか、指導部門で不足した経費を他部門にどう割り振るかが課題となります。ところが、現行の計算方法では、その約束ごとに矛盾が含まれています。
第1に、事業ごとの性格の違いが反映されていないことです。信用・共済事業ではほとんどの業務がオンライン化されていますが、販売・購買では、商流(取引)だけでなく物流が伴い、モノはヒトが運ばなければなりません。どうしても人手を多く必要とします。ところが共通管理費は人頭割・受益割・負担能力割で分担することになっており、経済事業は事業経費としての人件費のほかに共通管理費の負担割合も大きくなります。
第2に、総合性を生かして行われる部門間の連携が、経費負担に十分反映されていない事態が起きています。例えば、農産物の集荷・配送など販売経費は販売部門が負担しながら、その成果である販売代金は信用部に振り込まれて活用されています。また、信用部門でコストを負担していない資金が、販売事業に活用される場合には販売部門が信用部門に内部資金利息つきで借り入れる形となっています。これでは販売部が二重のコスト負担をすることになってしまいます。
総合経営の利点をいかす損益計算に
こうした計算方法を経て算出されたものが部門損益であり、その結果、信用・共済事業が黒字、販売など経済事業は赤字となっているのです。黒字部門は赤字部門に補てんしているわけではありません。ですから、補てんしていない金額を「年次計画で減らす」という「中間とりまとめ案」での表現自体に問題があります。
したがって、総合経営である利点をいかすためにも合理的な計算方法が確立するまで、法改正以前の内部管理用資料にとどめ、部門損益の公表義務を延期することが必要です。
抜本的な価格保障・所得補償政策こそ
「中間とりまとめ案」が前提としている「信用・共済が経済を補てんしている」とする事実はなく、実際に補てんしている事実もありません。むしろ、農産物販売を中心に信用・共済事業の原資も生み出されています。いま、農業・農協政策に求められているのは、農協の販売・購買事業が農家にとっても農協にとってもマイナスにならないような抜本的な価格保障・所得補償政策を示すことです。
(おわり)
(山本)
(新聞「農民」2011.3.7付)
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