TPPに不参加を
養豚業は壊滅、雇用も大損失
社団法人日本養豚協会
会長 志 澤 勝さんに聞く
社団法人日本養豚協会は、菅首相がTPP(環太平洋連携協定)への参加を表明した直後の2010年10月20日に、農水、外務、経済産業の各省大臣にあてて、TPPへの不参加を求める要請を行いました。同協会会長の志澤勝さん(神奈川県綾瀬市)に聞きました。
関税下げの荒波すでに経験した
私ども養豚生産者は、これまで豚肉の輸入自由化と関税の引き下げという荒波をすでに経験し、常に厳しい国際競争を強いられてきました。日本の養豚の自給率は約50%で、豚の飼養頭数は約90万頭といわれています。このような状況下でも、私たちは養豚経営を維持し、国民に安心・安全な国産豚肉を提供しています。
日本がもしTPPに参加して、アメリカ、チリなどから関税ゼロで安い豚肉が流入したら、キロあたり約440円の枝肉価格が、330円または320円に一気に下がり、農家は壊滅的な打撃を受けます。農水省は、TPPによる豚肉への影響について、生産量が70%、生産額も4600億円減少すると試算し、「銘柄豚は残り、その他は置き換わる」としています。
民主党政権になってからは、養豚農家のセーフティーネットは「養豚経営安定対策事業」(豚枝肉の平均価格が生産コストに相当する保証基準価格を下回った場合に、基金から差額分8割を補てんする)だけになっています。自己負担があるため、加入できる農家は6割ほどにすぎません。
輸入飼料上がり残さの奪い合い
また養豚経営は、すそ野の広い多くの関連産業を伴い、雇用者数は養豚で20万人、関連産業で83万人といわれています。TPP参加により、養豚が立ち行かなくなったら、雇用の確保にも悪影響を与えます。
さらに穀物価格の高騰など食糧危機の再来が懸念されるなか、輸入飼料の値上がりは深刻で、養豚農家にも重い負担になっています。小麦価格の高騰などで、製パン会社は無駄をなくそうと残さを出さなくなっています。加えて「えさ代が値上がりすると残さが減る」ために、残さの奪い合いになり、確保が困難になっています。
自給飼料の確保は、今後の大きな課題ですが、私たちは、食品残さの飼料化(エコフィード)や飼料用米の利用に取り組み、循環型農業を実践しながらコストの削減と日本型畜産の確立に努力しています。
他の畜産団体と連携し対応する
また、安全・安心でおいしい国産豚肉を提供するために、トレーサビリティー(生産履歴)をきちんと実施することが求められています。こうした取り組みや努力がTPPへの対抗上、より必要になってくると考えます。
日本養豚協会としては、農水省試算の裏付けなど情報収集を進めるとともに、他の畜産団体とも連携をとりながら、今後の対応を考えていこうと思っています。
(新聞「農民」2011.3.7付)
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