TPP参加懸念
日本肥料アンモニア協会
事務局長 成田 義貞さんに聞く
TPP(環太平洋連携協定)には、農業に関連する業界からも懸念の声があがっています。肥料の業界団体、日本肥料アンモニア協会事務局長の成田義貞さんに聞きました。
農業衰退は肥料にも悪影響
作付面積がへり肥料使用量も減
肥料産業は、国内の農家を相手に成り立っており、農業情勢がそのまま肥料の需要に影響します。
肥料業界を取り巻く現状は、農業人口の減少と高齢化、耕作放棄地の増加などで厳しくなっています。輸入農産物の激増などから、国内農産物の作付面積が減り、その結果として、肥料の使用量が減っていくという、農業動向と肥料消費はパラレル(並行)の関係にあるのです。
1975年ごろには、10アールの米を作るのにおおむね60キロの肥料が使われていましたが、いまでは3分の1ほどに減っています。
近年は施肥技術(施肥機など)の進歩から、省肥栽培の普及や施肥基準の見直し(多肥傾向から減肥に)など、肥料の効率化が進み、減少傾向に拍車がかかっています。
加えて、化成肥料の原料である窒素、リン酸、カリウムは輸入に頼らざるをえず、肥料も海外の影響を大きく受けます。
そうしたなかで、日本の肥料業者は、単肥から複合肥料への転換、低度化成(窒素、リン、カリウムの合計量が30%に満たない化成肥料)から高度化成(合計量が30%以上のもの)へと合理化を進め、農村での労働力不足対策や省力化に貢献して肥料の普及・発展に努めてきました。
国をあげて農業応援政策が必要
こうした厳しい肥料情勢のなかで、唐突に何の説明もなく出てきたのがTPPへの参加構想です。菅首相は「開国」などと言っていますが、日本は十分に開かれている国です。本来ならば、TPPよりも先に、国をあげて農業を強化・応援する政策が必要でしょう。そうした政策が何一つないまま、TPPに参加しようとしているのは問題です。
TPPは、参加国が原則、関税ゼロ%で貿易を行う協定で、価格競争力がぜい弱な農畜林水産業にとっては死活問題です。農水省の試算によれば、食料自給率は13%にまで落ち込むといわれていますが、このまま推移すると耕作放棄地がさらに激増し、日本の美しい田園風景が無残に変わり果てることが懸念されます。
大手マスコミが、TPPへの参加をあおっていますが、BSEや添加物などにアメリカの基準が押しつけられ、わが国の食の安全・安心が損なわれるおそれもあります。
私たちは自由貿易に反対しているわけではありません。ことは国のあり方を左右する大問題です。十分に国民的な議論を尽くし、目先の利害にとらわれず、確固とした農業基盤を作り上げ、そのうえで中長期的な視点のもとに判断していただきたいと思っています。
他の農業団体と歩調をあわせて
今後、TPPについて、農業団体から呼びかけがあれば、歩調を合わせていきたいと考えています。同時に「日本の農業の重要性」「農業生産に貢献する肥料の役割」を国民にアピールしていきたいと思っています。
(新聞「農民」2011.2.21付)
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