「農民」記事データベース20110214-960-12

キューバ農業視察リポート
(下)

北海道農民連有志


農民の生活は豊か、田舎も活気あり

 当初、「どこでも見せてくれるのか」と心配していたが、バスの移動中でも「ここの畑が見たい」と言うとバスを止めてくれる。さらに、「少し時間に余裕があるから水牛を飼っている農場に行こう」と飛び込み見学もあった。

 新規就農者や農業希望者多い

 特記したいことは、国が農産物の価格を保障していることだ。20頭を搾乳している酪農家を訪ねたとき、そこにはミルカーもバルククーラーもない。あるのは、搾る時に牛に与えるエサを入れるバケツだけ。朝夕、搾乳直後に集乳してくれるので設備投資がいらない。乳価は、生活感覚から推定して1キロあたり日本円にして80円から100円というところだろうか。この価格には、「あなたの牛乳を必要としています」という国のメッセージが込められているように感じた。

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都市型有機農業で使われているミミズたい肥を視察(ハバナ市内)

 都市労働者より農民のほうが経済的に豊かだそうで、田舎も活気があり過疎とは無縁だ。新規就農者や希望者も多く、国は約20ヘクタールを貸与し2年間の営農資金を与えている。キューバ革命で、プランテーション大農場はすべて接収して国営農場になったが、70ヘクタール未満の個人農場は私有が認められている。いま全農地の60%が国営だが、生産額では60%が個人農場で、国は個人経営を推奨している。

 自給率90%まで回復してきた力

 日本政府はTPP参加をめざしているが、20年前にキューバで起きた食料不足、そして90%までに自給率を回復してきた努力の過程を見聞したとき、農産物を工業製品や金融・サービスと同じ土俵で論じていいのかと、思わざるを得ない。医療・教育の無償化などによる生活不安のなさが、国民・農民のゆったりとした活力ある姿のベースになっていると思う。

 キューバは物価も安く治安もいい。ぜひ、多くの人に観光を兼ねてキューバの農業を見てほしい。

(野矢敏章)
(おわり)

(新聞「農民」2011.2.14付)
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2011年2月

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