新燃岳噴火
農業被害甚大
宮崎・都城入り 農民連・笹渡事務局長緊急リポート
関連/義援金への協力呼びかけます
宮崎、鹿児島県境の霧島連山・新燃岳(しんもえだけ、1421メートル)が1月26日午後3時半ころから、1500メートルほどまで噴煙をあげました。その後、噴火活動はさらに活発になり、高原(たかはる)町では住民が避難生活を余儀なくされています。また、噴火による火山灰で、宮崎県都城市など周辺地域では深刻な農業被害が広がっています。29日に現地入りした農民連・笹渡義夫事務局長の緊急リポートです。
これではタネもまけない
出荷間近のホウレンソウ全滅
牛舎の波板に7、8センチの大穴
噴火被害が広がっている都城市山田町に足を運びました。都城市に近づくにつれて車が灰を巻き上げ、道路や田畑、山、民家の屋根などが灰におおわれています。火山灰特有のにおいがたちこめ、目がチクチクします。住民の健康被害が心配です。ショベルカーが、視界をさえぎるほどの灰を巻き上げながら道路の除灰作業を行い、灰を積んだ大型ダンプカーが、灰煙をあげてひっきりなしに行き交います。どこの家でも屋根や庭の灰の片付け作業に追われていました。
牛の肥育とニンジンを生産している山下藤夫さんの牛舎の屋根の波板には、大きいものは7、8センチもある穴があいていました。奥さんは「屋根が噴石でたたきつけられ恐ろしかった。ヘルメットがなければ外を歩けない」と、涙ぐんで話してくれました。ニンジンも牛舎脇の牧草も10センチ近くもの灰で埋まっています。「いつまでこんな状態が続くのか。自然相手だからどうしようもない。噴火がやんでも種もまけない」
話している間も灰が降り続け、風向きによっては視界がほとんどなくなります。暗い牛舎の中で牛が鳴き声をあげ、灰がしみるのか大きな目から涙がこぼれていました。
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ハウスの屋根に積った灰を除去する農家―「やってもやってもきりがない」 |
避難所など生活支援は大丈夫か
ハウスでキュウリを生産している長峰修一さんは、一家総出でハウスの屋根と連棟の谷間にたまった灰の片付けにおわれていました。灰が日照をさえぎり生育に影響が出るばかりか、ハウス破損が心配です。出荷真近のホウレンソウは灰をかぶって全滅状態でした。
1日も早く噴火が鎮まることを祈りながら、「桜島では、火山灰対策で土壌を改良して農地を蘇らせる技術が蓄積されているはずだ」「農地は移動できないが牛の移動はできないものか」「農作物被害への補償、避難所の方々への食事をはじめとした生活支援は大丈夫か」「灰の片付け作業のボランティアが急がれる」など、いくつもの緊急課題があり、国や県がしっかり対応することが求められています。当面、県が災害救助法の適用を発令することが急務です。
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火山灰におおわれたホウレンソウ―「もう売り物にならない」 |
農民連 救援に全力
同時に、“農民の苦難あるところ農民連あり”の精神で、農民連自身の救援活動に全力をあげることが求められています。
そんななか、福岡県連の佐々木督文さんから、「降灰を100キロ送ってほしい。小分けして産直ボックスなどに入れてカンパを集めたい」との電話が舞い込み、宮崎県連大会で紹介され大きな拍手に包まれました。
口蹄疫(こうていえき)被害を乗り越え懸命な努力をしている最中に、鳥インフルエンザが追い打ちをかけ、さらに新燃岳の噴火被害を受けている宮崎のみなさんの心中に思いを馳(は)せ、今後の災害救援に全力をあげなければと決意しながら宮崎を後にしました。
▼義援金振込口座 銀行名 ゆうちょ銀行 総合口座 口座番号 10030―61671711 口座名 農民連災害対策本部
(新聞「農民」2011.2.14付)
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