「農民」記事データベース20110207-959-09

10年産備蓄米買い入れ

2月4日に第1回入札

関連/生消研が“米”で研究会


生産費を償う価格で買い入れを

 農水省は、2010年産の備蓄米買い入れについて第1回入札を2月4日に18万トンの枠で実施すると発表しました。民間レベルでは、集荷円滑化対策の農家拠出金(321億円)を活用し、10年産を17万トンの規模でエサ米に処理する対策が進められています。備蓄米の買い入れとあわせれば合計35万トンの市場隔離が実現します。

 米価の本格的回復は政府の姿勢次第

 こうした情勢を反映し、米価はようやく下落に歯止めがかかり、全農が取り扱うコシヒカリなど一部銘柄の相対価格はわずかずつ回復しています。しかし、前年に比べて平均15パーセント、60キロあたり2139円(農水省の相対価格調査2010年11月)も暴落した米価を、どこまで回復できるかは、政府の備蓄米買い入れの対応に大きくかかっています。

 ところが農水省は「全国一本で予定価格(非公表)以下の安い米から順に落札」の方式をとろうとしています。09年産買い入れの際は、市場価格を大幅に下回る価格で入札を行い、農水省自ら米価下落を誘導しました。10年産についても、大暴落した市場価格をさらに下回る価格で買うことなど、とうてい許されません。

 「交付金前提の買いたたき禁止」を指導した農水省

 昨年5月、各方面から、米卸業者などによる米戸別所得補償モデル事業による農家への交付金を見込んだ米の買いたたきが問題にされました。

 これに対して農水省は、業界団体等に対して「米モデル事業の交付金を理由に値引きを求める事態が憂慮される」「優越した地位を利用した値引き要請は、独占禁止法上問題」「米モデル事業の実施を踏まえ、不適切な取引が行われないよう」などと指導してきました。

 今回の買い入れでは、農水省自らの姿勢が厳しく問われることになります。「農家への交付金を前提にして政府自ら買いたたき」などという事態になれば、農家・国民の理解は得られず、今後の農政にも重大な影響をもたらします。

 農水省は米価の回復と需給の安定に責任を

 米価大暴落の放置で米農家に深刻な打撃を与え、いままた、遅きに失した対策で、産地や流通業者に大混乱を招きながら実施される備蓄米の買い入れです。農水省は、生産費(最新の統計は09年産で全国平均60キロあたり1万6733円)を償う当たり前の価格で、18万トン全量を買い入れ、米価の回復と需給を安定させる責任を果たすべきです。
(農民連ふるさとネットワーク 横山昭三)


どうなる米価・生産・消費

生消研が“米”で研究会

TPP反対など活発に討論

画像 食糧の生産と消費を結ぶ研究会(生消研)は1月22日、都内で研究会「どうなる?米の生産 どうなっているの?米の消費」を開きました。

 生消研会長の木村友一さんが「埼玉では、ブランド米『彩のかがやき』が高温などで規格外が多く、さらに米価が下がり、生産者はたいへんな状況にある。米価下落も、TPPへの参加も消費者の問題として考えることが大事。きょうの研究会で、自分自身の問題として考えるきっかけにしてほしい」と開演あいさつをしました。

 日本農業新聞農政経済部の高橋秀昭さんが、米をめぐる情勢について講演し、米消費の減少傾向、米価下落が長期間にわたっている現状を指摘。855万トンの需要見通しに対し、実際の需要は824万トンと見誤り、米の過剰を招いた農水省の責任にふれました。

 さらにTPPについて、「国産米の9割が消滅する。地方議会が意見書を上げるなど反対が広がっている」と述べました。こうした情勢のもと、「今こそ生産者と消費者との連携が求められている」と述べ、米粉・飼料米の普及や、トキ、コウノトリの復活など地域で進む環境保全の取り組みを紹介しました。

 参加者からは「米の消費拡大には、米飯の食生活を幼少のときから確立することが大事ではないか」「農家は再生産に見合わない生産費で米づくりをしている。米価はどこまで下がっていくのか」などの意見や疑問が出されました。

 TPP阻止への展望について、高橋さんは「生産者と消費者が手を結び、産業界もまきこんだ世論の盛り上がりが必要。JA全中が取り組む1000万人署名への協力を」と呼びかけました。

(新聞「農民」2011.2.7付)
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2011年2月

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