口蹄疫に絶対に負けないぞ!
再建へ向け一歩一歩確実に
口蹄疫(こうていえき)の「終息宣言」が出てから、4カ月が経ちました。殺処分の対象になった畜産農家も、復興に向けて一歩ずつ歩み始めています。しかし、「再開したい」と希望する農家は全体の約7割。そのうち、これまでに経営再開したのは約3割にとどまっています。その背景には、TPP(環太平洋連携協定)をめぐる動きや口蹄疫再発への不安がぬぐえないことがあり、慎重になっているためです。農民連の組合員も約5割の農家が依然再開できないでいます。
処分されず残った牛が近いうちに母牛になる
わが子をみるようなまなざし
牛のことしかわからないから
70頭余の牛を殺処分した西都市の橋口一博さん(69)は、奥さん(カズ子さん)が疲労で体調を崩すなか、息子の秀一さん(39)と「口蹄疫という見えない不安のなかで、恐怖の日々をもう過ごしたくない」「本当に宮崎県から口蹄疫がなくなったのか」と経営再開を悩みました。見かねた近所の農家が「ハウス園芸をやめて何棟かハウスが空いているからやってみないか」と、すすめてくれました。しかし、「私は牛の繁殖だけ一本で生活してきましたから、牛のことしかわかりません」と、答えたそうです。
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宮崎県西都市の橋口一博さん(左)と息子の秀一さん |
健康な牛育てる工夫をしながら
そして、昨年10月から子牛を導入して経営を再開しました。牛舎の屋根を高くして光が差し込むようにしたり、運動場を作って健康な牛を育てる環境づくりをしながら、子牛を迎え入れました。今では、秀一さんが中心になって牛の世話や牛舎の改築にがんばっています。一博さんは「たまに、息子にしかられる」とうれしそうに話します。牛舎の中には、ワラとおがくずが敷かれ、14頭の牛がのんびりと過ごしていました。その中の1頭は、口蹄疫発生前に農協に預けていたおかげで、殺処分されずにすみました。その牛は、2009年7月生まれの「おりひめ」です。一博さんは「近いうちに母牛になるかな」と、わが子を見るように話します。
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口蹄疫で大きな被害を受けた川南町の「電飾大作戦2010」。牛や豚をかたどったものや「みなさん、ありがとう」の文字も。畜産再開への感謝の思いがこもります |
復興へ進むためTPP必ず阻止
しかし、「導入した牛が、環境の変化や授精時期を逃している影響で、受胎しにくくなっている」「最初の出産は今年7月で、実際にセリに出せるのは来年5月。その間、収入のない生活が続く」など、不安と怒りを口にします。一番の問題は「TPPに参加するようになったら、やっとの思いで一歩踏み出したことがだめになる」ことです。
口蹄疫からの復興は始まったばかり。一歩一歩しっかり進むには、TPP参加は絶対に阻止しなければなりません。
(宮崎県農民連 来住誠太郎)
(新聞「農民」2011.1.3付)
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