「農民」記事データベース20101220-954-02

TPP参加反対

全国漁業協同組合連合会
漁政部長 大森敏弘さんに聞く


漁業・漁村の崩壊は国益損う

画像 TPPにより、1次産業は大きな打撃を受けるといわれています。漁業はどうなのか。全国漁業協同組合連合会(全漁連)漁政部長の大森敏弘さんに聞きました。

 すでに自給率半減

 日本は、四方を好漁場に囲まれた世界有数の漁業国ですが、水産物(食用魚介類)の自給率は、1964年の113%をピークに、2008年には62%まで下がっています。TPPによって関税率がゼロになると、輸入量が増え、自給率がさらに下がるのは必至です。

 農水省の試算でも、関税などの国境措置が撤廃されれば、水産物の生産減少額は4200億円程度と高額です。かなりの品目が輸入水産物に置き換わるとされます。

 これまでのWTO(世界貿易機関)交渉やEPA(経済連携協定)などの2国間交渉に比べても、関税の引き下げがあらゆるものに及び、あまりにも一律的です。

 これまでケネディ・ラウンド(1964年から67年)、東京ラウンド(73年〜79年)、ウルグアイ・ラウンド(86年〜94年)と、度重なる関税の引き下げを受け入れてきました。ウルグアイ・ラウンドの決着した94年に17万あった漁業経営体は11万まで減少し、水揚げ金額もピーク時の2兆8000億円から1兆6000億円にまで落ち込みました。

 漁村の衰退が加速

 水産の現場では、漁業者の高齢化と減少が進んでいます。また魚価が生産コストを反映していないのも問題です。燃油が暴騰し高値で推移するなど、生産コストが上がっても、量販店を中心とした販売で価格競争に飲み込まれ、魚価が上がらず、経営が安定していないのです。これでは漁業後継者や新規参入者が増えることはありません。

 さらにTPPによって漁村の衰退が加速することになります。漁村に漁業者が住むことによって、国境監視、海難救助、環境保全など多面的な機能が発揮されています。漁村の崩壊は、国益を失うことを意味するのです。

 水産の自由化は、世界の水産資源の管理にも重大な影響を与えます。天然資源の繁殖力に依存する漁業は、資源を適度に管理しながら営まれなければなりません。輸出が原因で、輸出国の漁獲ラッシュが起こり、資源管理と環境保全を無視した漁獲や養殖が起こることもありえます。

 農・林業者とも共同

 いま地方でも、農協主催の集会に漁業関係者が参加したり、漁連単位で反対決議をあげたり、TPP反対の取り組みが広がっています。全漁連としても、11月に全国の県連会長会議を開催し、対応を協議するとともに、東京・日比谷で開かれた全国農協中央会主催の集会に参加しました。また、国会に農林水産委員を出している政党本部をすべて訪問するなど、反対の声をあげています。

 私たちは、漁業関係者をはじめ農・林業のみなさんとも共同して、TPPへの参加を一方的に推し進めることに断固反対したいと考えています。

(新聞「農民」2010.12.20付)
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2010年12月

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