韓国の農業と農民のたたかい (3)
地域農業の支援条例づくり
農民が参画する農業政策づくり
韓国では、イ・ミョンバク政権が、農産物の自由化推進と企業の育成、外国資本の農業参入などを柱とした農業政策を掲げており、地域農業の振興と食糧主権の確立という農民の要求とは正反対の道を進んでいる。
こうしたなかで、農民自らが農業政策づくりに参画する試みがなされている。特に地方分権が強化され、食品の安全性や環境保全、農村地域の活性化など、食糧主権の実現に向けた地域農業の支援条例づくりが取り組まれている。
支援条例づくりの特徴は、(1)首長などの執行責任者が選挙で交代しても、中断することなく政策が持続される、(2)地域の特性を反映した政策を立案することができる、(3)地域のニーズに合わせて住民の力で発議し立法化するため、地方自治が活性化する(ある一定の署名を集めて議会に提出すれば、条例づくりのために審議しなければならないという仕組みがある)、などがあげられる。
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報告するKWPA(韓国女性農民会)のキム・ミキョンさん |
全国で条例は2143件に…
現状はどうか。私たちの調査では、地域農業支援条例は全国で2143件に達している。これらは、大きく5つのグループに分けることができる。
(1)生産と流通に関する条例。このなかには、学校給食支援の条例も含まれる。
(2)福祉に関する条例。このなかには、農作業によるケガなどの治療も含まれる。
(3)所得に関する条例。中央政府の直接支払金制度を補完し、価格安定基金の創設やさまざまな資金運用・融資など。
(4)環境保全型農業に関する条例。
(5)人材育成に関する条例。この中には、女性農業者の育成支援条例や帰農者への援助条例などが含まれる。
そのほかには、農村独身者の国際結婚支援条例や地域農業開発センターの設置・運用条例などといったものもある。
これら条例づくりによって、地域レベルでのあらたなアプローチと地域農業支援へのシステムを確立することができた。そして、地元住民の政策づくりへの参加と合意のなかで、地方自治を一歩前進させることができた。
問題点3つと今後の課題は…
問題点は、(1)目的と対象が明確でない。その地域の主要な農産物でないものを対象にしたり、生産費の保障ではなく廃棄処分のための保障を目的にしたものなどがある。(2)条例はつくられたが、施行規則がつくられないために実行されず、「眠れる森」の条例になっている。(3)中央政府や広域自治体の施策に伴う条例になっているため、地域の特性を十分反映されていない、などがあげられる。
今後の課題は、(1)実のある支援策をどう作っていくか、(2)農民の要求をどう条例づくりにつなげるか、(3)実行にむけた取り組みを強めること、(4)条例ができた後に地域住民をどう参加させていくのか、などがあげられる。
(おわり)
(新聞「農民」2010.12.6付)
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