韓国の農業と農民のたたかい (2)
「コメ大乱」の原因と対策
韓国統計庁の資料によると、米価は持続的に下落している。8月15日現在、全国平均1俵(80キロ)あたり13万2460ウォン(日本円で約9300円)で、2005年以降最低となっている。平野部では12万ウォン(同8400円)台まで下落し、15年前の水準。地域によっては10万ウォン(同7000円)台で、これは前年同期の20%減であり20年前の水準だ。
在庫米の増加が米価下落の原因
その原因は、在庫米(過剰米)が増加していること。政府は10月末の在庫米を140万トンから149万トンに修正した。これは、適正在庫量72万トンの2倍に相当する。
在庫米が増加した要因は、第一に、輸入米(ミニマムアクセス米)の増加。2005年に23万トン(うち主食用に2万トン)、2008年には29万トン(6万トン)、2014年には41万トン(12万トン)まで増加する。第二に、政府による公共備蓄米の買い入れが減少し、民間の買い入れのみを増やしている。第三に、北朝鮮への米支援を中断した。2004年から平均25万トン程度(最高は40万トン)を支援していたが、イ・ミョンバク政権は中断した。第四に、国民一人当たりの米消費量が毎年2%ずつ減少し、年間74キログラムになっている。
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日韓政策協議で記念品を交換する農民連の真嶋副会長(左)とKPL慶尚北道のナム・ソンミン政策委員長 |
食糧主権脅かす反農業的な政策
こうした事態に、政府は「米の価格安定及び需給バランス対策」を発表した。主な内容は、(1)年間の需要量426万トンを上回る米を、農協が買い取り市場から隔離する、(2)在庫米のうち、古米50万トンを加工用などに緊急処分する、(3)来年から3年間に限って毎年3万ヘクタールを減反し、他の作物を栽培するなど。しかしこの対策は、米価下落を一時的に安定させる「繕(つくろ)い処方」であり、食糧主権を脅かす反農業的な政策だ。
「コメ大乱」解決の出発点は…
「コメ大乱」解決の出発点は以下の通り。(1)ただちに人道的な北朝鮮への米支援を再開すること(なお、イ・ミョンバク政権はその後、米支援を再開した)、(2)低所得者層への米の現物支援を拡大すること(政府は、2002年から低所得者層が安く購入できる「穀物割引支援制度」を創設したが、無料ではなく半額支援のため対象者の37%しか恩恵を受けていない。さらに適用率が低調との理由で関連予算を大幅に削減した)、(3)公共備蓄米の買入拡大、(4)実質所得確保のために「所得補てん直接支払金」の引き上げ(政府は、「米価が下落しても『支払金』で目標価格の97%を補てんできるので、農家収入には問題ない」と主張しているが、目標価格は生産費の増加を反映していない。全国の平均価格なので地域の実態を反映していない、全量に対する補てんではないなどの問題点がある)、(4)大型スーパーの低価格販売競争を規制すること。
そして、中長期的には、米を市場まかせにするのではなく、国が米の需給と価格の安定に責任を持つべきだ。
(つづく)
(新聞「農民」2010.11.29付)
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