TPP 開国でなく壊滅だ食健連、農民連など横浜対抗行動
APEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議が開かれた横浜市で11月14日、経済評論家の内橋克人さんを講師に「APECにモノ申す…講演と市民からの告発『自由化は経済と国民のくらしを脅かす』」が「建設プラザかながわ」で行われ、満員となる200人が参加しました。主催は、全国食健連(国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会)、農民連、食農健神奈川会議(食糧・農業と国民の健康を守る神奈川会議)、軍事費を削って、くらしと福祉・教育の充実を求める国民大運動実行委員会。
APECにモノ申す経済評論家 内橋克人さんが講演「TPP開国論を問う」のテーマで講演した内橋さんは「“3つの異様”がまかり通っている」と告発。一つめは、菅首相がTPPを「平成の開国」と述べている点について批判。江戸時代末期の開国が、日本に裁判権や関税自主権の放棄を迫る不平等条約に基づくものだったことを解明し、「TPPも『例外なき関税ゼロ』をめざしたものであり、関税自主権を放棄するもの。『開国』でなく『壊滅』だ」と警鐘を鳴らしました。 二つめに、前原誠司外相が「GDP(国内総生産)に占める1次産業は1・5%。この1・5%を守るために、98・5%が犠牲になっている」と発言したことについて、内橋さんは「まったくの間違いだ」とばっさり。 「むしろ(輸入を受け入れて)日本農業を開きすぎ、農業が犠牲になっている」と述べ、飼料用穀物の輸入量を大幅に増やし、その大半をアメリカからの輸入に切り替えた結果、「肥料と飼料の循環が断ち切られた」と指摘しました。 さらに、TPPを主導するアメリカのねらいについて、内橋さんは(1)進出した外国資本に国内企業と同じような待遇を与える(2)外資による投資への絶対的自由の保障―などを内容とするMAI(多国間投資協定)戦略があることを述べました。 その結果、TPPが何をもたらすのか。内橋さんはアメリカがカナダ、メキシコと結んだNAFTA(北米自由貿易協定)を例にあげ、「メキシコではトウモロコシの大量輸入により、国内でトウモロコシを作る農家がいなくなった。主食が壊滅し、トウモロコシを原料にしてつくるトルティーヤが高騰した」と告発しました。 3つめに、大手マスコミが示し合わせたように「早くやれ」と迫り、異常な社説を掲げていることを紹介しました。 最後に、内橋さんは「勇気を伴ったかしこさをもって、『生きる』『働く』『暮らす』ことを分断させるのでなく、統合させる提唱者に。安いものに流れるのでなく、なぜ安いのかを問う自覚的な消費者になってほしい」と呼びかけました。
“百害あって一利なし”農民・労働者もTPPを告発国民的な運動に第2部の市民からの告発では、農民を代表して、宮城県農民連の鈴木弥弘事務局長が自らの米づくりの実態を示しながら、「異常気象で打撃を受け、生産費を大幅に下回る手取り価格で、今年は3500円の赤字。米つくってメシが食えない事態だ」と述べ、「TPPは百害あって一利なし」と断言しました。労働者を代表して、全労連・全国一般東京地本の梶哲宏副委員長が報告。「農産物の再生産を保障する価格保障と、労働者の全国一律最低賃金制の確立は表裏一体。農民も労働者も国民的立場で共同を」と呼びかけました。 神奈川の「生産者と消費者が手をつなぐ会」の岩見洋子さん(横浜市)が「子どもたちの未来を守るために、手をつないで運動していきたい」と発言しました。 参加者から「TPPの危険な役割を明らかにし、国民的な運動にしていかなければ」「TPPに参加することは『開国ではなく壊滅だ』という話が印象的でした。かしこい消費者になりたいと思います」などの感想が多数寄せられました。
横浜駅西口で宣伝・署名活動全国食健連、農民連などは講演に先立って、通行人らでにぎわう横浜駅西口で、宣伝・署名行動を行いました。農民、労働者、消費者の代表がかわるがわるマイクを握り、「TPP反対」を呼びかけました。立ち止まって聞き入り、署名する若者も多く、1時間の行動で、TPP反対の署名が139筆寄せられました。 署名した横浜市の岩村ひろみさん(61)=主婦=は「民主党に期待して投票しましたが、失望しています。輸入が増えれば、農業そのものがだめになってしまう。農産物は国産に限ります。国民はもっと声を上げないと」と語っていました。
(新聞「農民」2010.11.29付)
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[2010年11月]
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