「農民」記事データベース20101115-949-04

「口蹄疫(こうていえき)」は終わっていない――
再建・復興これからが本番


再発防止へ対策強化
完全補償へ基金創設
持続可能な政策提起

 日本に10年ぶりに発生した口蹄疫。4月20日の疑似患畜発見の発表から7月4日の最終発症まで、宮崎県の11市町、292戸の畜産農家に被害が及びました。この中には農民連の会員もいます。この間、殺処分した牛・豚その他頭数は28万8643頭で、児湯郡5町では牛や豚が1頭もいなくなりました。

 被害が広がった背景には、(1)口蹄疫に対応する家畜伝染病予防法(家伝法)ができたのは59年前の1951年で、今日のような大規模な経営を想定したものではなかった、(2)「殺処分した家畜の埋却地は個々の農家が探すのが原則」(農水省)など、家伝法はすべての対策を農家の自己責任としている、(3)埋却する土地が確保できなかった、(4)殺処分対象の頭数があまりにも多く、獣医師や補助者など人手が不足した―などがあげられます。

 畜産農家は出荷制限のため収入の道が絶たれ、生活費に事欠き、飼料代の支払いなどもできない状況でした。1200頭の殺処分を待っているという養豚農家が、地元新聞(5月22日付)に投書しています。「88歳の姑(しゅうとめ)が短歌でいたわってくれた。『養豚の音なき終わりにすべもなくただありがとうの感謝あるのみ』『近日に命絶たれる母豚あり日々出産をするもあわれぞ』―わが家の豚に感染が確認されてから今朝までに119頭の子豚が死にました。わが家の畜舎では、ウイルスが爆発炎上しています。お願いです。1日でも早く消火してください」―どんなにせつなく苦しかったことでしょうか。かける言葉もありません。

 こうしたなかで農民連は宮崎県連を援助して6月6日、宮崎県の畜産と地域経済を守るために14団体と共同して「口蹄疫対策県民ネットワーク」を立ち上げました。そして、農家に移動制限が敷かれるという困難の下で、「口蹄疫110番」による電話相談などの救済・再建活動や、関連事業所での労働者の解雇・休業対策、政府・自治体との交渉、国会への請願署名活動、義援金の呼びかけ、「宮崎の牛肉を食べて支援する」活動などに取り組んできました。

 そしてこの間、全国の仲間のみなさんからいただいた物心両面のご支援に心から感謝します。

 今後の課題としては、(1)再発防止のために、原因究明と感染ルートの解明、(2)畜産農家はもとより、被害を受けたすべての者を対象にした完全補償と再建への支援、そのための十分な「基金」の創設、(3)59年前に制定された家伝法の抜本改正、(4)畜産経営の大規模化路線を見直し、家族経営で持続可能な畜産のあり方を政策提起―などがあげられます。

 8月27日の「終息宣言」以来、口蹄疫は終わったかのような報道ですが、畜産農家や関連事業にとってはこれから厳しい再建・復興への道が待っています。今後とも、県民ネットワークに結集し、全国の仲間のみなさんの支援をいただきながら、「農民の苦難あるところ農民連あり」の志で奮闘する決意です。

(農民連・口蹄疫対策本部事務局長 村尻勝信)

(新聞「農民」2010.11.15付)
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2010年11月

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