お米食べ苦境の農家救おう
県食健連が支援を呼びかけ
埼玉のブランド米「彩のかがやき」
高温障害で農家大打撃
専門の科学者も「まさしく異常気象だ」と述べた今夏の猛暑が、主食の米にも大きな影響を及ぼしています。白未熟粒の多発などの品質低下や収量の不足に加えて、異常な米価暴落が重なり、農家に深刻な影響を与えています。埼玉県では、県が育種、推奨してきた主力品種「彩のかがやき」の85%が「規格外」という大打撃を被っています。こうしたなか「農林業と食糧・健康を守る埼玉連絡会(埼玉食健連)」を中心に「県内の米農家を守ろう」という運動が始まり、県などの行政も対策に乗り出しています。
「こんなにひどい年は初めてだ。白未熟粒も多いし、収量も少ない」―県内有数の米どころ加須市で、「彩のかがやき」16ヘクタールを含めて30ヘクタールの田畑を耕作する塚田静雄さんは、収穫したばかりの米袋を前に、がっくりと肩を落としました。「収量も悪く、戸別所得補償で補てんされても生産費にも届かない。深刻なのは、買い手もつかず米が動かない(出荷できない)ことだ。資材代の支払いなど、これから資金が必要になる時期なのにどうしたらいいのか」と塚田さんは頭を抱えます。
農民連が県に販売促進を要請
こうした農家の苦境に、埼玉県農民連の松本慎一事務局長は、「見た目は白っぽくて良くないが、味はそん色ない。県内の米の70%がスーパーや米穀店で販売されており、スーパーが等級を絶対視せず、『彩のかがやき』を積極的に取り扱ってくれることが農業を守るうえでどうしても必要だ。そのためには消費者の応援も必要だし、なにより県が販売促進に強い力を発揮しなければ状況は好転しない」と強調します。
県が対策などに取り組み始める
埼玉県農民連は、10月19日には県の農林部に、また27日には副知事に要請を行い、対策を求めました。塩川修副知事は「農家が“来年はもう作らない”と言うのが一番困る。県としても真剣に販売促進に取り組み、スーパーなどにも働きかけたい」と答え、同席した農林部長は「関係条例を適用して、助成や無利子融資などの支援をできるよう急いで準備している」と述べました。
27日には上田清司知事自ら鹿野道彦農水大臣を訪れ、農家から強い要望の上がっている水稲共済の特例的な救済措置を要請しました。このほかにも、県からの強い要請に応えるかたちで、大手スーパーで「彩のかがやき」の新米の販売が始まっているほか、学校給食への活用なども広がっており、農業を守ろうという機運が高まっています。
共同の力で地域の農業守りたい
「消費者のみなさん、埼玉のブランド米『彩のかがやき』を食べて、埼玉の農家を応援してください」――10月27日の夕方、通勤客が行き交うJR浦和駅前に、埼玉食健連が、「彩のかがやき」を無料配布しながら呼びかける声が響きました。この宣伝には、埼玉県職員組合(県職)、埼玉県労働組合連合会(埼労連)、新日本婦人の会埼玉県本部、埼玉県農民連などから約20人が参加しました。
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「『彩のかがやき』を食べよう」と呼びかける埼玉食健連の人たち(10月27日、JR浦和駅前) |
通りかかった40代の女性は、「食料自給率向上を求める署名」にサインしながら「今年はお米の出来が悪かったって、ニュースでも見ました。ぜひこのお米を買って農家を応援したいです」と言います。
埼玉食健連の事務局を担う県職の小玉久さんは「農民連から農家の苦境を聞いて、食と農にかかわる今いちばんの緊急課題で何か行動を起こそうと、心一つにまとまりました。これからも、こうした共同の力で地域の農業を守っていきたい」と力強く話していました。
(新聞「農民」2010.11.15付)
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