「農民」記事データベース20101025-946-19

旬の味


 収穫が終わった田んぼに秋祭りの太鼓の音が響く。この時期は秋の味覚、マツタケの季節でもある。子どものころはあちこちでマツタケご飯の香りがしたものだが、かげなくなって久しい▼長年の慣習で、マツタケ山の競売をしている。個人の山でも期間中は自分の山に入れない。かつては税務署も入ったマツタケ山だが、いまは松枯れで松もなく、採れた話は聞こえてこない。それでも寄付のつもりで買う人もある。売り上げが村祭りの経費になるためだ。一(いち)縷(る)の望みを胸に山へ入るのだが、それも命がけだ。クマよけの鈴を腰に付け、出会わないことを祈りながら山を歩く。イノシシ、シカ、サルはもちろんのこと、クマが昼間からうろつき、人家にまで入ってくるようになった▼生物多様性の国際会議が開かれているが、いまやマツタケも「絶滅危ぐ種」になってしまった。経済成長の飽くなき追求が、気象や生態系にゆがみをもたらし、「旬の味」にも影響を与えているなら、そんなやり方はやめた方がよい。

(安)

(新聞「農民」2010.10.25付)
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2010年10月

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