旬の味
収穫が終わった田んぼに秋祭りの太鼓の音が響く。この時期は秋の味覚、マツタケの季節でもある。子どものころはあちこちでマツタケご飯の香りがしたものだが、かげなくなって久しい▼長年の慣習で、マツタケ山の競売をしている。個人の山でも期間中は自分の山に入れない。かつては税務署も入ったマツタケ山だが、いまは松枯れで松もなく、採れた話は聞こえてこない。それでも寄付のつもりで買う人もある。売り上げが村祭りの経費になるためだ。一(いち)縷(る)の望みを胸に山へ入るのだが、それも命がけだ。クマよけの鈴を腰に付け、出会わないことを祈りながら山を歩く。イノシシ、シカ、サルはもちろんのこと、クマが昼間からうろつき、人家にまで入ってくるようになった▼生物多様性の国際会議が開かれているが、いまやマツタケも「絶滅危ぐ種」になってしまった。経済成長の飽くなき追求が、気象や生態系にゆがみをもたらし、「旬の味」にも影響を与えているなら、そんなやり方はやめた方がよい。 (安)
(新聞「農民」2010.10.25付)
|
[2010年10月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224
Copyright(c)1998-2010, 農民運動全国連合会