戸別所得補償来年度から本格実施
北海道では…農家はどうなるか?
北海道農民連委員長 山川 秀正
「水田・畑地において、生産数量目標に従って生産を行う販売農家(集落営農も)に対して、販売価格と生産費の差額分に相当する交付金を直接交付する」という来年度の農業者戸別所得補償制度の概要が、農水省から公表されました。「本格実施」と銘打ったこの戸別所得補償が農家にどんな影響を及ぼすか。改善が必要な課題もたくさんありそうです。
農家にとっては、現行制度と比べて自分たちの懐具合がどうなるのかが一番の関心事です。北海道の十勝地域でも、総合振興局や農協などから多くの試算結果が公表されています。共通しているのは、この制度が現行の水田・畑作経営所得安定対策と比較して、小麦と大豆には手厚く、主食用米とてん菜、でん粉原料用ばれいしょは冷遇されているということです。
畑作経営は、輪作で品質や収量を保っています。今回の制度でも緑肥輪作加算を設け、輪作の必要性を認めているにもかかわらず、制度設計の段階からてん菜やでん粉原料用ばれいしょは、減収になることは明らかです。4年輪作で2つの作物で収入が減っては経営が成り立ちません。さらに、戦略作物として位置付けた小麦や大豆の作付けが増加すると、米のように販売価格が下落する可能性も高く、バランスのとれた交付金にすべきです。
北海道では、すでに秋播き小麦やナタネの播種作業は終わっています。しかし、現行の「激変緩和枠」を廃止して設けられる「産地資金」の運用をはじめ、面積や数量の確認方法、農業共済引受け単価、数量払いの時期など未確定の部分があります。これらを早急に明らかにすべきです。
政権交代が実現し、多くの農家も民主党に期待を持ちました。しかし、歴代の民主党党首などが「戸別所得補償は農産物の関税撤廃に備えるもの」、「農産物の関税を撤廃しても1兆円で間に合う」などと発言を繰り返していることを忘れてはいけません。農業者が誇りを持って生産に励める農政を実現しましょう。
(新聞「農民」2010.10.25付)
|