本の紹介
後藤光蔵著
暮らしのなかの食と農シリーズ「都市農業」
新たな期待の中で
困難・課題と展望を示す
筑波書房ブックレット『暮らしのなかの食と農』シリーズから、「都市農業」が刊行されました。筆者は、都市農業の専門家、武蔵大学教授※の後藤光蔵さんです。後藤さんはまた、東京都の農林・漁業振興対策審議会委員、東京都の「都民の暮らしが潤う東京農業推進協議会」委員などを務めています。
いま都市農業が、直売所の取り組みや農業者と住民の交流などを通じて、日本農業の活性化の道として注目されています。こうした取り組みは、都市の農業・農地が持っている環境保全機能や生活にやすらぎをもたらす緑化機能、災害防止機能などとあいまって、これまでの都市の農業・農地は不用、開発の対象という流れを、農業・農地は快適な都市づくりには欠かせないものとする新たな都市像(農業のある都市)へ転換しようとしています。こうした都市住民のあらたな要求のもとで、地方自治体は率先して農地の保全とその活用施策を打ち出し、国も開発優先の都市計画法を見直そうとしています。
本書は、こうした都市農業に対するあらたな期待の中で、「都市農業とは何か」という入り口から、都市の農業・農地を維持するために抱えている大きな困難(相続税問題や生産緑地制度など)、解決すべき課題、そして今後の展望をコンパクトにまとめています。
「都市農業を大切にすることは、日本農業を大切にすることにつながる」と、筆者は呼びかけています。農業者だけでなく、都市住民にこそ読んでほしい一冊です。
▼筑波書房
▼定価 750円+税
※【訂正】 10月18日号にて、以下の訂正がありました。
10月11日付「本の紹介」の記事で、筆者は「武蔵大学教授」の誤りでした。おわびして訂正します。
2010年10月25日、訂正しました。
(新聞「農民」2010.10.11付)
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