「農民」記事データベース20101004-943-02

農水省

「GMナタネに問題なし」
自生調査の結果を発表

 農水省はこのほど、輸入されて、こぼれ落ちた遺伝子組み換え(GM)ナタネの自生調査の結果を発表しました。それによれば、「遺伝子組換えセイヨウナタネが繁殖して非組換えのナタネ類(セイヨウナタネ、カラシナ及び在来ナタネ)を駆逐したり、組み換えられた遺伝子が交雑可能な近縁種に拡(ひろ)がったりする可能性が極めて低い」と結論づけています。「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」の天笠啓祐代表に、農水省の調査結果をどうみるのか聞きました。
(勝又真史)


天笠さん “調査方法に問題”と批判
輸入港だけに限定している
汚染がより深刻になる前

画像 農水省の調査では「GMナタネの自生は問題なし」の結論がでるのは当然のことです。調査方法に問題があることを最初に指摘しなければなりません。

 第一に、調査範囲を「輸入港周辺」に限定していますが、港だけでなく、港から油脂会社まで延びる輸送経路にも調査を広げ、GMナタネの自生が多く見つかっている油脂会社周辺も対象に含めるべきです。さらに飼料の輸入港や飼料工場周辺など、調査の網の目を広げなければなりません。

 第二に「交雑した個体は、発見されませんでした」と述べていますが、調査期間が2006年から08年までの3年間と短く、09年以降の結果が反映されていないのは問題です。08年までは、市民団体が行うGMナタネの抜き取り作業などの対策が功を奏し、汚染がまだ深刻でない時期でした。

 09年以降、交雑種が各地で確認されたり、1次検査で「遺伝子組み換えでない」とされた個体が、2次検査で「遺伝子組み換え」と判定されるなど、汚染がより深刻化しています。昨年と今年の調査結果を反映していたら、もう少し違った結論になったのではないでしょうか。

 第三に、セイヨウナタネと交雑可能な近縁種を「カラシナ、在来ナタネ」にしていますが、これでは狭すぎます。市民団体の調査では、同じアブラナ科の雑草やブロッコリーなどとの交雑種とみられる個体が見つかっています。

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GMナタネが密生する道路脇。他の作物への影響が心配です=福岡市

 こうした調査を、農水省だけに任せていたのでは、汚染の実態はいつまでも明らかになりません。農民連食品分析センター、生協、市民団体による調査の意義がますます重要になってきます。

 また環境への影響評価の対象を野生生物に限定し、GM作物を機械的に承認しているカルタヘナ国内法が、GM汚染に対して、いかに無力かがわかると思います。このまま放置しておけば、農作物への汚染が広がり、農業への影響は測り知れません。カルタヘナ国内法を改正し、生物多様性を守る法律に変えることが必要です。

 そのためにも10月に名古屋市で開かれる生物多様性条約第10回締約国会議(COP(コップ)10)とカルタヘナ議定書第5回締約国会議(MOP(モップ)5)に参加することは重要です。運動を大いに強め、遺伝子組み換え生物のない世界を目指して力を合わせましょう。

(新聞「農民」2010.10.4付)
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2010年10月

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