食糧主権の確立が生物多様性を守る
多国籍企業による生物資源の
支配にストップを
(大要)
2010年9月 農民運動全国連合会
はじめに
会議の主な議題は、(1)遺伝子組み換え生物(GMO)などが多様性を破壊した場合の「責任と修復」の方法の確立、(2)遺伝資源へのアクセスと利益配分に関する国際的な枠組みの策定、(3)2002年のCOP6で採択された「生物多様性の損失速度を2010年までに顕著に減少させる」という2010年目標の達成状況の検証と新たな目標(ポスト2010年目標)の策定――などです。
1、法的拘束力のある「責任と修復(救済)」の方法を確立しよう
GMOなど国境を越える移動から生じる「損害」について、前回のMOP4では、途上国と、モンサントなどバイテク企業の代弁者の役割を果たしている先進国とが激しく対立しました。
私たちは、日本政府が姿勢を改め、GMO導入にともなう様々な影響評価の対象を広げ、法的拘束力を持たせた「責任と修復(救済)」の方法を具体化することを求めます。
2、多国籍企業の横暴を抑え公正・衡平に
遺伝資源へのアクセスと利益配分(ABS問題)は、遺伝資源をめぐる先進国と途上国との対立が最も顕著に表れています。
私たちは日本政府に対し、横行するバイオ・パイラシー(生物学的海賊行為)に歯止めをかけ、途上国と先進国の間の不公平を是正するため、遺伝資源の提供国に利益を公正に配分することを求める法的拘束力をもった国際ルール(名古屋議定書)の策定に全力をあげ、議長国としての責任を果たすことを要求します。
3、日本農業と生物多様性
日本では戦後、生物多様性に配慮を欠く公共事業や、農薬と化学肥料の大量使用によって、田んぼや川の生き物が減少し、田園地帯では当たり前に見られたトキやコウノトリも姿を消しました。
現在、農薬や化学肥料に依存しない農法や環境共生型農業の実践が各地で行われ、トキやコウノトリの野生復帰をめざす取り組みが広がっています。米の生産だけでなく、景観の維持や洪水・水害の防止、生物多様性を育む機能など、田んぼの果たしている役割を見直し、消費者も参加してともに考える「田んぼの生きもの調査」の活動も進んでいます。
4、ターミネーター技術の復活は生物多様性を破壊する
(略)
5、地球温暖化防止と多国籍企業の利潤追求は両立しない
(1)地球温暖化は生物多様性にとって重大な脅威
生物多様性を維持していくうえで地球温暖化と気候変動が、重大な脅威になっています。科学者たちが発する警告は深刻です。
生物多様性を守るために、地球温暖化防止に向けた一刻も早い真剣な取り組みが求められています。
(2)温暖化の解決策にならず、生物多様性を破壊するREDD
(略)
(3)多国籍企業が支配を強めるバイオ・エンジニアリングと環境破壊
遺伝子組み換え技術を使ってバイオ燃料を作るなど、「バイオ・エンジニアリング」を利用する研究が、「地球温暖化対策」の名目で多国籍企業によって進められています。
6、 小規模家族農業経営は、生物多様性を育む
小規模、家族農業経営を持続させて生物多様性を守る運動と、農産物輸入自由化阻止、多国籍企業の食糧支配を許さないたたかいを結合させましょう。そのためには、新自由主義と多国籍企業支配に対するオルタナティブ(根本的な代案)である食糧主権を確立することが不可欠です。
10月に名古屋で開かれるCOP10・MOP5の会議と行動への参加を契機に、私たちは、かけがえのない農と食、地球を守るために、地域的・国内的・国際的な連帯を強め、たたかいます。
(新聞「農民」2010.9.27付)
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