持続可能な都市農業めざす
生き物が再び戻ってくる自然を
「野田農場」問題中心に
名古屋市でシンポ開く
8月28日、名古屋市でシンポジウム「めざせ!持続可能な都市農業
II 〜みんなで支える生物多様性豊かな都市農業〜」が開かれました。
名古屋市守山区中志段味(なかしだみ)にある野田農場は、大型スーパー誘致を計画する土地区画整理組合と名古屋都市整備公社から厳しい「追い出し」を受けてきました。2008年12月には、土地区画整理組合が何の通知もなく突然ブルドーザーなど10台以上の重機で農地をめちゃくちゃに破壊するという“違法行為”を行いました。このため野田農場は、土地区画整理事業による移転に反対して「仮換地指定の取り消し」を求め、名古屋地裁に提訴していました。
一方で、野田農場と土地区画整理組合は、名古屋市の仲介のもと協議を進め、4月28日、主な農地を残すことで「合意」に達し、野田農場は現状のまま農業を続けていくことができることになりました。
今回のシンポジウムで野田留美さんからは、(1)野田家の換地先は従前地の野田農場のコアエリアを中心とする、(2)その減歩率を25%とする、(3)野田家の日照確保のため、野田家の自宅宅地を農地の南側に換地する、(4)取水については、庄内川と組合が設置する井戸で対応する――の4つの和解点が報告されまし
た。
農業と結んだ新しい都市像を
環境問題に取り組む弁護士の籠橋隆明さんは基調講演の中で今回の裁判を振り返り、「区画整理組合は土地を交換価値や投資の対象と見ており、裁判の争点は都市における持続的な社会のあり方だった」と述べ、「『美しい』と思う人間の情感が持続社会をつくっていく」と語りました。
また、今回のシンポジウムでもたくさんの人たちから野田農場を含めた里地の自然や生物の豊かさについて報告がありました。それと同時にそこでの生き物の減少も報告され、再び生き物が戻ってくる自然を取り戻さないといけないことを確認しました。
「自然を見て『美しい』と感じる情感や豊かな生物をはぐくむ自然を取り戻したいという人々の思いが農業と都市を結び新しい都市像を描いていく」――。私がシンポジウムに参加して思ったことです。これからも多くの人に野田農場のある里地を訪れてほしいと思います。
(愛知農民連 服部円美)
(新聞「農民」2010.9.27付)
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