「農民」記事データベース20100920-941-12

知恵を出し工夫もして
個性派農業をめざす
新規就農者3人を訪ね

農の会 現地研究会開く

長野県佐久市

 農民連に団体加盟する「農の会」は8月28日、長野県佐久市で現地研究会を行い28人が参加しました。現地研究会では、新規就農した3人の個性的な農業の取り組みを学びました。


ミニトマトのハウス栽培
“農民は知識労働者です”

―― 坂下 理人さん(29)

 「アイコ」という品種のミニトマトの収穫で忙しい坂下理人さんは、就農2年目です。ハウスでのミニトマトのほかに、ズッキーニやレタスなどの露地栽培をしています。坂下さんは、大学を卒業後、外資系の製薬会社で営業を担当していましたが、農業がやりたくて山梨県の農業法人で研修したあと、長野県の里親制度を活用して就農しました。

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「農民は知識労働者」と話す就農2年目の坂下さん

 「こんな時間には絶対にハウスの中には入らない」という昼下がり、坂下さんは汗をぬぐいながら、「すべてのバランスをとると、作物は健全に成育する」「人間によくないものは作物にもよくない。だから農薬も化学肥料も減らす」「限られた時間と労力の中で、シンプルにならざるをえない」など、ミニトマトの栽培や土づくりの方法などを語ってくれました。そして「農民は知識労働者であり、農業とは農と商の融合です。目標をたてたら戦術を組み、まっしぐらに突き進むことが大事では」と話します。

オーガニックフラワーで
花の生産と環境への配慮

―― 鈴木 義啓さん(39)

 無農薬・無化学肥料で草花の栽培(オーガニックフラワー)に挑戦している鈴木義啓さんは、就農7年目。「たぶん日本で私一人でしょう」という鈴木さんのめざす農業は、健全育成された花の生産と環境への配慮を両立させることです。だから、ハウスの中にはカエルやカマキリなどの昆虫がいっぱい。雑草も生育初期の競合を避けた後は「マルチがわりに最適」と、あえて伸ばしています。

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オーガニックフラワーを栽培する鈴木さん(右端)

 市場からも評価が高いというオーガニックフラワー。鈴木さんは「労力は自分一人というなかで、無駄なスぺースと時間をなくし、物を売るだけでなく人や環境の接点も追求したい」と話します。

やさいの森プロジェクト
農業が派生する力大切に

―― 石川  徹さん(33)

 宮城県出身の石川徹さんは、大学農学部を卒業後、長野県の里親制度で研修を受け、宮城県からやってきた両親とともに6年前に就農しました。この間、試行錯誤をかさねながら地域の信頼も得て規模を徐々に拡大し、いまではホウレン草とズッキーニ、いんげんを三本柱に「やさいの森プロジェクト」をめざしています。

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「やさいの森プロジェクト」をめざす石川さん

 「オーガニックがキーワード」という石川さんは、「農業が派生する力を大切にすること。これをもとに仲間づくりや地域資源の活用と環境保全、遊休農地の解消などの問題解決に展望を見いだしたい。そして、農業体験場を提供し、新規就農希望者の育成などに取り組む。これが私のやさいの森プロジェクト」と抱負を語ってくれました。


「信州ぷ組」で学んだ仲間たち

 3人は、「信州ぷ組」の仲間です。「信州ぷ組」とは、長野県の里親制度(熟練農業者を「里親」として登録し、約2年間、技術習得などの支援を受ける)で研修を受け新規就農した人たちが中心になって立ち上げた集まりで、自主的に土づくりなどの勉強会や視察会を定期的に開き、栽培技術などを交流しています。

 「信州ぷ組」の代表で、農の会副会長でもある土肥寛幸さんは「私もスイカづくりに取り組んでいますが、かれらのよいところは、みんなで学んだ共通の基礎知識をもとに、それぞれの環境や条件にあわせて知恵を出し工夫しながら栽培に取り組んでいる姿勢です」と話していました。

(新聞「農民」2010.9.20付)
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2010年9月

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