「農民」記事データベース20100823-937-03

備蓄米買い入れせず
農水省言明

米価下落放置に怒り広がる

関連/棚上げ備蓄は賛否両論


 政府・農水省は、農民連、全国食健連(国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会)との交渉(8月5日)や、JA中央会でつくる北海道・東北農業対策協議会の申し入れ(7月29日)、参議院予算委員会の答弁(8月4日)などで、相次いで「需給調整や米価下落対策のための政府買い入れはしない」と言明しました。

 これは、政府が米価下落に歯止めがかからない異常事態を放置する姿勢を明確にしたものです。

 政府・農水省の米価暴落容認の姿勢に市場は敏感に反応し、年産を問わず米価はさらに続落。新米の農家概算金も各地で「1万円」が示されるなど重大事態を迎えています。

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新米の概算金を報じる8月12日付の業界紙「商経アドバイス」

 このままでは2010年産の米価下落は底が知れず、新米が行き場を失うという指摘があるなかで、政府・与党に「下落対策をとれ」の運動を緊急に強めることが求められています。

 米価・口蹄疫で政府に緊急要請

 全国研究交流集会に参加した全国の農民連会員は、全国食健連とともに8月5日、米価暴落対策と口蹄疫(こうていえき)被害の対策を求めて、農水省と内閣府に対して、緊急要請を行いました。

画像 農水省への要請では、戸別所得補償モデル事業の申請件数が132万件にのぼったことから、山田大臣が「これで米の需給は締まっていく。米価も維持される」と述べた問題について追及。「作付面積もわからないのに判断できるのか。米価は現実に下落している。加入申請の詳細を明らかにせよ。40万トン規模の備蓄米を買い入れよ」と怒りをもって迫りました。

 農水省は「面積については8月中に数字は出す」と答えましたが、「米価下落については所得補償の変動部分で補てんできる。買い入れでの価格維持は、生産調整をしない農家に恩恵があり不公平だ。買い入れはしない」と言明しました。

 参加者は「所得補償は、労賃部分を8割しか補償せず、生産費をカバーしていない」と指摘。「農水省がいま米価の下落を止めようという姿勢を示すことが大事だ。このままでは豊作が喜べない。買い入れを含めて検討を」と強く要求しました。

 また内閣府へは、口蹄疫特措法に基づく基金の早期創設と被害を受けたすべての産業に対する全面補償を求めました。

 この後、参加者は、民主党、自民党、みんなの党、公明党、共産党、社民党の国会議員事務所を訪れ、同様の要請を行いました。


食糧部会

棚上げ備蓄は賛否両論

米価千円下落で財政負担1千億

 米価安定求める声も

 7月30日と8月9日に開かれた「食料・農業・農村政策審議会食糧部会」で農水省は、米備蓄制度を回転方式から棚上げ方式に転換し、2011年度から毎年20万トンを買い上げ、5年間保管した後に飼料用などに売却する案を示しました。

 部会では「備蓄本来の目的は、不足時における消費者への安定供給であって、過剰米対策や米価維持対策を目的とした買入れや売渡しを行うべきではないとの意見が大宗であった」とした上で、棚上げ備蓄については賛否両論を併記した意見を取りまとめました。

 部会では生産者委員の冨士重夫JA全中専務が「豊作時は何もせず不作時には放出するというのでは市場に影響しないとは言えない」「備蓄米の売買には柔軟性も必要ではないか。戸別所得補償で米価が60キロ1000円下がれば、1000億円近い財政負担がかかる。米政策全体で財政負担を考えるべきではないか」と意見を述べ、米価安定対策の重要性を指摘しました。

(新聞「農民」2010.8.23付)
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2010年8月

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