「農民」記事データベース20100719-933-06

私と農業

全日本年金者組合副委員長
三上利栄(りえい)さん(77)


百姓と同じ願い “年金者一揆”

画像 年金者組合は、毎年秋に全国各地で総決起し、怒りのスローガンを書いたむしろ旗を掲げて年金者一揆を行っています。2006年から始まり、今年で5回目です。

 むしろ旗に怒りを

 年金者一揆は、岩手県の三陸地方で江戸時代末期の19世紀半ばに起きた百姓一揆、南部三閉伊(さんへいい)一揆も一つのヒントに始まったものです。当時、村ごとに年1俵の米が徴収され、さらに数度に及ぶ理由のない御用金の徴収(消費税のようなもの)などに農民が怒り、一揆軍の先頭には「小○」(こまる)という旗が立てられました。これには、「今の殿様では困る」「税金が高くて困る」という意味が込められていました。

 「安心して老後を暮らせる社会にするために」という私たちの要求は、百姓一揆に立ち上がった農民の怒りや願いと共通しているのです。

 実家で酪農手伝い

 私の先祖は、三閉伊一揆に参加した農民でした。私は岩手県岩泉町で生まれ、高校卒業までそこで過ごしました。

 畑を1町歩(1ヘクタール)ほど持っていたほか、牛を3、4頭飼っており、私も小学校4年から高校2年まで乳搾りを手伝い、近所で子牛が生まれるときはそこに駆けつけて出産を手伝っていました。牛はまさに生活の一部で、高校までは獣医師志望でした。いまでも牛や馬を長時間見ていても全然飽きることがありません。

 先日、年金者組合の組織拡大の応援で熊本に行き、九州ブロック6県の代表と話し合いました。宮崎県では、口蹄(こうてい)疫問題でたいへんな思いをしており、県本部代表が「自分の出身地である川南町は、町中が消毒の消石灰で真っ白な状態だ」と言っていました。何十万頭もの牛や豚が殺処分され、埋却されている報道を見たり聞いたりすると、私も畜産農家でしたから、農民のやりきれない思いが痛いほどわかります。

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百姓一揆の伝統受け継ぐ「年金者一揆」=2009年10月15日、東京・日比谷野外音楽堂

 農業は“国の基”だ

 農業は国の基幹産業、“国の基(もと)”です。食料自給率40%では、とても国民の食料を支えることなどできません。年金者組合は最低保障年金制度の実現を求めていますが、農家にも最低生活の保障が確立されるべきだし、そうでなければ後継者も育ちません。

 いま、私が住んでいる神奈川県伊勢原市で市民大学の実行委員長を務めています。そこで地域を知り、仲間をつくることを目的に「ファーマー公開講座」という科目を設置し、20人以上の応募がありました。

 ジャガイモやタマネギを栽培し、2週間に1回、畑の草取りや手入れを行っています。市民に少しでも農業に親しんでもらえればと考えています。

(新聞「農民」2010.7.19付)
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2010年7月

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