「農民」記事データベース20100719-933-01

オーストラリア訪問

ビア・カンペシーナ東南・東アジア地域代表団の一員として
農民連青年部長 杵塚 歩

関連/米屋さんと生産者をつなぐ交流会

 ビア・カンペシーナ東南・東アジア地域の代表5人は、オーストラリアの家族農家と連帯を築くことや地域での運動と取り組みを視察することなどを主な目的に、6月24日から4日間、オーストラリアのアデレードとブリスベンを訪問しました。


力あわせ自由化に対抗する
もう一つの新たな流れを

画像 アデレードでは、フレンズ・オブ・アースが受け入れ団体となって、市民農園を視察し、有機栽培に取り組む農家や農業技術を提供する市民団体と交流しました。南オーストラリア農民連合との会談では、オーストラリア側からビア・カンペシーナの運動に強い関心が示され、「ビア・カンペシーナの活動に参加したい」との希望が表明されました。70人余りが参加した地域組織とのフォーラムでは、代表団がビア・カンペシーナの活動や農業青年の状況、東ティモールでの持続可能な農業の取り組みなどを紹介。またオーストラリア農業の直面する問題(注1)について質問し、討論しました。

 ブリスベンでは、フード・コネクト(注2)が受け入れ団体となり、市民フォーラムと農村視察を行いました。フォーラムではビア・カンペシーナの歴史と運動が紹介され、どのように食糧主権を実現するかについて議論しました。

画像
オーストラリアを訪問したビア・カンペシーナ東南・東アジア地域の代表=左からユン・グンスンさん(国際調整委員、韓国)、イルマ・ヤニーさん(地域スタッフ、インドネシア)、杵塚歩さん(青年コーディネーター、日本)、アルセニオ・ペレイラさん(青年コーディネーター、東チモール)、1人おいて、キム・ヘイソックさん(地域スタッフ、韓国)

消費者と生産者が結びついて
安全な食糧・農村守る運動進む

 今回の訪問では、消費者サイドの視点からオーストラリアの農業と食糧の取り組みを見ることができました。都市部の住民は、毎日消費する食糧がどこでどのように誰によって生産されているのかに強い関心を持っています。そして、消費者と生産者の結びつきの中で、安全な食糧の生産と農村を守る取り組みが進められていることがわかりました。

 一方で、オーストラリアの農業は、農家がそれぞれ独立した個人の事業として行われているため、農家全体の声や要求をまとめ運動体にしていくシステムが、確立されていません。

 いま、日本とオーストラリアの政府間では、EPA(経済連携協定)の締結に向けて協議が進められ、菅新政権は経団連とスクラムを組んで「日豪EPAの推進」を打ち出しています。今回の訪問で、オーストラリアの人たちにビア・カンペシーナの運動と食糧主権を紹介しましたが、オーストラリアでも食糧主権という共通のスローガンのもと、さまざまな分野で活動する人々がひとつに力を合わせ、市場原理=自由化に対抗する新たな流れを築くことが望まれます。

画像
広大なトウモロコシ畑―日本からみると畑全部が干ばつだと思えるほど乾燥した土地でした(ブリスベン郊外)


(注1)オーストラリア農業の直面する問題

 政府による家族農業を守る適切な政策はなく、家族農業は競争原理の市場システムのもと、とても厳しい状況に置かれている。外国から輸入される安価な農産物に太刀打ちできず、この40年間に毎日5件の家族農家が離農し、多くの家族農家が農村から都市部へ流出し、農村が消滅している。その一方で、企業による農業支配が強まり、農地は多国籍企業や地域の有力者など少数の手に集積されている。そして、農地を保護する政策がないため、商業や工業、住宅、ダム建設などの開発事業によって農地が失われている。
 また、農民は土地を所有してもその権利は地表10センチメートルほどに限定され、その下の土地は政府の所有となっているため、石炭や天然ガスなどの自然資源が発見されれば、政府は自由に採鉱することができる。企業は政府から採鉱の権利を買い取り、農家は農地の侵害だけでなく採鉱に伴って土壌が塩化し、生物多様性も失われている。さらに、干ばつが非常に深刻で、水へのアクセスは近年の気候変動によって大きな痛手を受けている。

(注2)フード・コネクト

 フード・コネクトは、家族農家を守り消費者と手をつなぐ新たな地域支援型の農業(CSA)として2004年に創設された。このシステムは、消費者が農産物の持続的生産を保障するために事前に出資し、農家が旬の野菜や果物をボックスに詰め合わせて消費者に提供する。現在では、毎週1000箱以上の「野菜ボックス」が会員に配達されている。ボックスは中継ポイントにおろされるが、ブリスベンには67カ所のポイントがあり、そこは消費者の学習の場ともなっている。また、産地への訪問や生産者との交流なども積極的に行い、消費者と生産者の相互理解を進めている。


“産地まるごと届けたい”
米屋さんと生産者をつなぐ交流会
東京会場
8月22日(日)午後2時〜(交流会)、4時半〜(懇親会)
会  場
東京・文京区民センター3階会議室(地下鉄三田線、大江戸線「春日駅」徒歩0分、または丸ノ内線、南北線「後楽園駅」徒歩5分)
参 加 費 無料、ただし懇親会は3000円
申し込み 農民連ふるさとネット TEL 03(3590)1337 FAX 03(3590)9524
大阪会場
8月29日(日)午後2時〜(交流会)、5時半〜(懇親会)
会  場 大阪市都島区・大阪リバーサイドホテル(JR環状線「桜ノ宮駅」西口から徒歩2分)
参 加 費 無料、ただし懇親会は3000円
申し込み 農民連近畿米ネット TEL 06(6965)2900 FAX 06(6965)2901

(新聞「農民」2010.7.19付)
ライン

2010年7月

農民運動全国連合会(略称:農民連)
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224

本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
Copyright(c)1998-2010, 農民運動全国連合会