宮崎・口蹄疫(こうていえき)まん延
現地リポート
西都・児湯農民組合 有岡英典書記長
“加害者になりたくない”
まん延終息へ苦渋の決断も
宮崎県児湯郡で発生した口蹄疫は、またたくまに拡大し、県下第二の畜産地帯を壊滅状態に陥れています。
私たち西都・児湯農民組合は、この地域1市5町の農家80人(うち畜産農家15人)で構成されています。畜産農家はこの間、収入も断たれたなかで、必死に感染防止に取り組み、畜産以外の農家も移動制限やさまざまな風評被害に苦しみながら、車両消毒などのボランティアに取り組んできました。
安否確認と激励の電話を毎日
しかしまん延は止まらず、川南町、都農町、高鍋町などではワクチン接種と全頭殺処分が決定し、すべてを失う畜産農家は、大きな怒りと不安と、疲労から来る虚脱感に襲われています。野菜農家である私も、農民連会員や農業高校の同窓生など地域の農家に、安否確認を兼ねた励ましと相談の電話を毎日のようにしています。
当初、畜産農家からは、まだ元気な牛や豚にワクチンを打ち、殺処分することに、反対の声もありましたが、「まん延終息には殺処分もやむなし」「(まん延の)被害者にはなっても、加害者にはなりたくない」と、まさに苦渋の決断をせざるをえませんでした。
この間、農民組合は、「感染農家はもちろん、ワクチン接種による殺処分の対象となった農家にも、再建の望みが持てる十分な補償と、消毒や埋却などの損害の全額補償などを」と、県や政府に求めてきました。この要求は、他の農業団体や市町村長などとも一致しており、国も全額負担を表明せざるを得なくなっています。
全て失う農家に怒り・不安と虚脱感
行政の怠慢もまん延の原因に
今回の口蹄疫のまん延は、徹底した消毒など、最低限のルールやマニュアルもないという行政の怠慢にも大きな原因があります。
感染を食い止める防疫ラインとなっていた一ツ瀬川にかかる橋での消毒作業も、私の住む西都市では、国道では24時間態勢だったものの、それ以外の市道やわき道では夜間は素通りできる状態でした。市の対策本部に、24時間消毒するか、消毒できない時間は道路を閉鎖するよう、何度もかけあいましたが、対処はまったく遅く、宮崎県農民連から政府の対策本部に申し入れ、やっと24時間の消毒態勢が取られたという事態でした。
感染が4件で終息したえびの市では、市当局が「これ以上、感染農家を絶対増やさない」との確固とした姿勢で、ヘリコプターによる消毒など防疫措置を徹底したことが、農家や市民一丸となった感染防止の取り組みとなり、終息宣言に結びつきました。
再建への補償問題や、発生原因や感染ルートの解明など、課題はまだ山積みです。全国からのご支援をお願いします。
(新聞「農民」2010.7.5付)
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