農業・農村の活性化に向け
JA全中が政策討論会
「戸別所得補償」「WTO交渉」など7党代表が議論
JA全中は6月8日、「農業・農村の活性化に向けた政策討論会」を東京都内で開催しました。JAグループの政策提言を受け、主要7政党の代表が討論。全国のJA代表ら約1000人が聞き入りました。
JA全中から政策提言説明
全中・茂木守会長のあいさつの後、冨士重夫専務が「政策提言」の概要を説明しました。政府が進める戸別所得補償モデル事業に対し、赤字補てんにとどまらず、農業の多面的機能を評価・算入した直接支払い制度を提案。これを土台にして、需給と価格の安定、所得の増大を図るよう求めています。また、食料安全保障の視点から、農産物の適正な関税水準を維持することなどで自給率50%を目ざすとし、WTOドーハ・ラウンドの「現在の議長案は受け入れられない」という立場を明記。「食料主権を確保するために、…新たな農産物貿易ルールを確立すること」も求めています。
「食料主権」も大きな論点に
各党代表によるパネルディスカッションでは、所得補償制度やWTO交渉などをめぐって討論が行われました。
最初に民主党の一川保夫副幹事長が「戸別所得補償モデル事業は政策の大転換。農業を持続的に発展させ、国土保全や経済発展につなげたい」と政権交代の成果を誇ったのに対し、自民党の宮腰光寛農林水産部会長は「モデル事業は、貿易自由化を前提にしたEU型の不足払い。集落機能の維持・強化など、日本型の制度に改めねばならない」と注文をつけました。日本共産党の紙智子農林・漁民局長は、「所得補償だけに頼るのではなく、生産費に見合う農産物価格を保障することで農家も意欲を持てる」と提案しました。
また、「戸別所得補償で米の需給がゆるんでいる。政府は責任を持って対処するのか」(宮腰氏)、「変動部分の金額はいつ決めるのか。来年度予算に間に合うのか」(公明党・石田祝稔農林水産部会長)などの疑問が出されましたが、一川氏は「前政権の失敗は繰り返さない」「年末には間に合わせる」など、抽象的な回答にとどまりました。
WTO交渉をめぐっては、一川氏が「所得補償が自由化とリンクしているという指摘があるが、そんなことはない」「WTOで日本の意見が通らないのは、国内世論が割れているから」などと弁明しました。司会者から発言を求められた紙氏は、「一国の食料生産のあり方は他国からあれこれ言われることではない。食料主権は世界の流れだ」と強調。みんなの党の浅尾慶一郎政策調査会長は、「競争力のある強い農業をつくれば、日本の農業は輸出産業になる」などと主張しました。
社会民主党の吉泉秀男農林水産部会長は「米価が低落しており、300万トンの棚上げ備蓄をただちに行うべきだ。政府米の管理を民間に委託するのは問題だ」と指摘しました。一方、国民新党の松下忠洋副幹事長は「大量のミニマムアクセス米の輸入が日本農業の重しになっている」と再々発言しましたが、自らがかつて農林水産政務次官として自民党農政の中枢にいたこととの関係は語られませんでした。
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集会は、口蹄疫(こうていえき)の終結と生産者の経営回復をめざす特別決議を採択しました。
(新聞「農民」2010.6.21付)
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