口蹄疫(こうていえき)地域経済と生活も重大な危機感染拡大さらに深刻に
宮崎県の口蹄疫の感染拡大がさらに深刻さを増し、県内外の畜産業はもとより地域の経済と生活も重大な危機にひんしています。そんななか、宮崎県では「口蹄疫から宮崎の畜産と地域経済を守ろう」と、広範な団体・個人が結集し、6月6日、「口蹄疫対策県民ネットワーク」が結成されました。6、7の両日には全国食健連が調査団を現地に派遣し、ネットワーク結成総会に参加したほか、尾鈴(おすず)農協や風評被害に苦しむ都農(つの)ワイナリーなどを訪問し、激励。宮崎県庁を訪問し、応対した河野俊嗣副知事に義援金を手渡し、激励しました。
全国食健連が現地調査団住民は心身とも疲労こんぱい「私の弟の養豚場も感染した。(発生件数の最も多い)川南町はいま、殺処分される豚や牛の悲鳴があちこちで響き渡り、埋却地からは死臭が漂い、ハエや蚊が驚くほど増えている。住民はウイルスを媒介してはならないと極力外出しないようにしているが、それでも感染は止まらず、心身ともに疲労こんぱいし、自殺者が出ないかと心配でならない」――川南町議(日本共産党)の内藤逸子さんは、全国食健連現地調査団との報告会で、現状をこう告発しました。防疫作業に派遣されている公企労(宮崎公営企業労働組合)執行委員長の釘元(くぎもと)英俊さんは、殺処分や埋却作業の様子を生々しく報告。「作業している人はえんえんと続く家畜たちの死を目の当たりにしながら、不眠不休で必死に取り組んでいるが、埋却地も人手も足りず、感染拡大のスピードに追いつかない。感染をとめるには、一刻も早い殺処分と埋却が必要だ。国が責任をもって支援すべきだ」と訴えました。
観光・サービス、商工業にも影響口蹄疫は、地域の農業、経済、住民生活などにも深刻な影響を及ぼしています。都農町のブドウ農家で尾鈴農協の理事も務める黒木(くろぎ)玲二さんは、「本来なら今ごろ減反の現地確認をする時期だが、それどころでなくなっている。また飼料用稲を買うはずの畜産農家で口蹄疫が発生している例もあり、耕種農家からはこれらの補償を求める声が上がっている」、「口蹄疫による移動制限で、施設園芸ではトマトやキュウリの夏作に必要なたい肥がまったく手に入らない。せめて代替肥料の購入費を補償してもらいたい」と、せつせつと要望を語りました。 また、セリの中止や出荷制限で畜産農家の収入の道が絶たれているだけでなく、飼料業者、人工授精士、削蹄師、運送業などの畜産関連業も軒並み仕事がなくなっています。イベントもほとんどが中止され、観光やサービス業、小売業にも被害が広がっています。 商店街も「売り上げが半分以下に落ちた」という商工業者が75%にも及んでいますが、ネットワーク結成総会では「感染拡大がまだ続いているなかで、商工業者にも支援がほしい、とはなかなか声を上げにくい」という率直な意見も出されました。これに対し、会場から「口蹄疫の被害を受けているのは農業も商工業も労働者も同じ。遠慮することはない。地域が分裂してしまわぬよう、みんなの要求を集めて運動していこう」との呼びかけがあり、大きな拍手がおこりました。
全国第2位誇る畜産県なのに…宮崎県は、農業産出額の57%を畜産が占め、肉用牛も豚も全国第2位の産出額を誇る畜産県ですが、新たに施行された口蹄疫特別措置法によって、発生農場から10キロ圏内のすべての牛と豚にワクチンが接種され、順次、殺処分される計画です。畜産県で、地域の家畜がすべていなくなるということの影響は、計り知れません。現在すでに畜産農家で働いていた農場労働者の解雇が相次ぎ、全頭殺処分が進めば、さらに解雇が増える恐れが指摘されています。 また、多忙を押して調査団と懇談した尾鈴農協の黒木(くろき)友徳組合長は、強い疲労をにじませながら、「農家もたいへんだが、農協の経営も危機にひんしている。昨年、販売と関連資材あわせて110億円あった畜産部門の収益がゼロになる。農協が倒れてしまったら農家も守れない」と述べ、行政の支援を求めました。
「口蹄疫対策県民ネット」結成意見・要望広く結集して
こうした困難のなか、宮崎県農民連、宮崎県労連(宮崎県労働組合総連合)、宮崎県商工団体連合会、新日本婦人の会宮崎県本部が事務局団体となって、「口蹄疫対策県民ネットワーク」が結成されました。宮崎県農民連会長の落合幹雄さんが、「宮崎の畜産は長い間かかって築き上げられてきた。ネットワークの力を発揮して、再建できる意欲がわくよう運動していきたい」とあいさつしました。 |
「口蹄疫110番」 口蹄疫対策県民ネットワークは、口蹄疫110番を開設しました。 多くの声をお寄せください。 ▼口蹄疫対策県民ネットワーク事務局(宮崎県農民連内) TEL 0985(55)0399 FAX 0985(54)5464 |
[2010年6月]
農民運動全国連合会(略称:農民連)
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