「農民」記事データベース20100614-928-01

全国食健連が20周年記念フォーラム

食・農と健康を結び
幅広い国民共同強く

関連/フォーラム参加者の感想

 全国食健連(国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会)は5月29日、東京・新宿農協会館で、20周年記念フォーラム「21世紀のいま…語ろう!食と健康、農林漁業の未来を―求められる国民共同運動の課題は何か」を開き、全国から145人が集まりました。会場は「20周年にふさわしく、これからの活動に大きな展望を見いだすことができた」(兵庫食健連・中村允彦さん)との思いであふれました。


食糧主権による自給率向上
地球温暖化防止は緊急課題
学校給食で農の大切さ子に
地産地消の取り組みを強く

 坂口正明事務局長が「この20年間で、食の企業化・国際化が進み、新しい課題が山積している。問題を解決する上で、幅広い国民をさらに結集し、運動を強めよう」と開会あいさつしました。

 パネルディスカッションでは、元農業・農協問題研究所理事長の暉(てる)峻(おか)衆三さんが「日本の食料安全保障の現局面をどうとらえる?」のテーマで報告。終戦直後、アメリカが、世界の軍事、金融、工業、農業の超大国として君臨し、日本が、アメリカとの軍事・経済協力を義務づけた日米安保条約の下で、アメリカの支配体制に組み込まれた経過を述べました。

 1980年代に入り、世界は新自由主義、WTO(世界貿易機関)、多国籍企業化の時代を迎え、「『前川リポート』により、日本は農政に市場メカニズムを導入し、『構造改革』を推進する方向を国際公約にした」と批判。「食糧主権にもとづいて、アメリカとの交渉や、WTOルールの改定に臨むべきだ」と述べました。

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討論する(左から)暉峻、本間、猪瀬、浅沼の各氏

 元日本環境学会会長で前フェリス女学院大学学長の本間慎さんは「地球温暖化は農業生産を破壊する」と題して報告。「農業生産への温暖化の影響はすでに出ている」と述べた本間さんは「ブランド化された作物種は、温暖化により、その主産地での栽培が不可能となり、北方へと押しやられてしまう」と指摘しました。

 また温暖化の影響は、果樹でみると全都道府県で出ており、野菜、水稲でも多くの影響がでていることを紹介しました。さらに「気温が上昇すると、害虫の種類や個体数が増加し、病害虫による被害が北上する」と述べ、「今後の食料問題を考えると、温暖化防止は緊急課題であり、CO2の25%削減は急務だ」と訴えました。

 「子どもたちに食と農をどう伝えるか?」のテーマで報告したのは、学校給食栄養教諭で全日本教職員組合栄養職員部の猪瀬里美さん。

 「苦手な野菜がない」という子どもはほんの一握りという実態を示し、それらを克服するために5年生になったら自給率、地産地消の学習、6年生では地元の野菜を使った献立作りを行う実践例を紹介。「給食で使う野菜を育てて、みんなに食べてもらいたい」と校庭に畑を作り、「肥料をどの位置にどのくらい入れたらよいか」「どうやって掘って植えたらよいか」と自分たちで考えて行う農作業の取り組みを述べました。

 猪瀬さんは「農家の人にも学校に来てもらい、周りのおとなたちが手をつないで、子どもたちに学校給食の体験をさせたい」と語りました。

 長野の佐久食健連、日本農村医学研究所の浅沼信治さんのテーマは「食と健康、農を結んで地域に共同広げる」。

 日本で最初に病院給食を始めた佐久病院では、地域でとれた野菜をできるだけ活用し、看護学生や研修医には、農業のつらさや楽しさを体で知ってもらおうと農場実習を実施しています。旧臼田町(現佐久市)では、食文化の向上と安全な食を興すことを目的に、有機農業研究協議会をつくったことを紹介。89年に設立された佐久食健連は「食と農のつどい」を開催し、地元産の伝統食を楽しんでいます。

 さらに「地域の生産物を、その地域の人が食べるという、かつての日本では『ふつう』だったことが壊されてしまった」と述べ、「地産地消のさらなる取り組みの推進で『ふつう』を取り戻し、食健連の運動を広げたい」と強調しました。
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夜の結成20周年記念レセプションで民謡を披露する埼玉農民連副会長の高橋利男さんらのグループ


フォーラム参加者の感想

 いろんな団体と共同して

  国土交通省全建設労働組合の笠松鉄兵さん
 経済、農業、労働とつながって、かつ情勢を世界的な視野で見ないとだめだと再認識させられました。

 労働運動に取り組む上でヒントになることが多く、いろんな団体と共同した取り組みを進めることが大事です。

 子らへの声かけ明日から

  小学校で栄養士をしている厚木幸子さん
 猪瀬さんのお話は参考になりました。野菜嫌いの子どもが多く、「どうしたら野菜を食べさせられるのか」と悩んでいましたが、子どもへの声かけを、明日から実行してみようと思います。同時に農業の大切さも子どもたちに伝えていけたらと考えています。

 若い人が増えるように

  埼玉県農民連事務局の関根耕太郎さん(27)
 子どもたちにとって田植え、稲刈り体験は大事なんですね。私も農作業体験の手伝いができればと考えています。高齢化している農業に若い人がもっと増えるように努力したい。

(新聞「農民」2010.6.14付)
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2010年6月

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