「農民」記事データベース20100517-924-02

宮崎県

口蹄疫感染 急速に広がる

セリ中止・移動規制次々と


 4月20日に宮崎県で口蹄疫(こうていえき)に感染したと疑われる家畜=疑似患畜=(牛)が発見されて以降、豚にも感染が広がるなど深刻な事態に。宮崎県内はもとより九州各県、全国の畜産農民が不安を募らせており、一刻も早く原因を解明し、まん延を防ぐ必要があります。

 「4月23日からセリが始まる予定だったが中止になり、6月予定のセリも中止は確実。その間の資金繰りをどうしたらいいのか…」。宮崎県西都市で子牛の生産をする浜砂忠則さん(61)は頭を悩ませます。

 宮崎県では、感染の疑いが5月9日までに56例見つかり、患畜と疑似患畜は6万2854頭にのぼります。行政は殺処分と埋却、移動制限区域からの家畜の搬出制限などの防疫措置や消毒などの措置をとっていますが、畜産農家は重大な損害をこうむっています。移動制限区域内の農家も、出荷ができないために困難に直面しています。

 宮崎県農民連が畜産農家から寄せられた不安の声を集約。「わが家の牛に感染しないかと思うと不安でなかなか眠れず、牛舎に行くのが怖い」「セリの中止や移動規制によって、今月中に入る予定だった収入がないためにえさ代などの支払いができない」「30〜80%の補償では経営をやり直すことはできない」などの声が寄せられています。

 浜砂さんも「出荷を再開するまでの損失を何とかしてほしい。畜産農家が安心して営農できる施策をぜひ」と訴えます。


原因解明・防止策・全額補償・稲わら輸入禁止

万全な防疫対策と救済を

 農民連・畜全協・食健連が農水省交渉

 農民連、畜産農民全国協議会(畜全協)は国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会(全国食健連)とともに4月28日、農水省を訪れ、家畜伝染病である口蹄疫の根絶と畜産農民の経営と暮らしを守るための緊急要請を行いました。北海道、千葉、神奈川からも畜産農家が参加しました。

 要請では、(1)発生原因、感染経路を至急解明し、まん延防止のための万全な防疫対策を実施すること(2)殺処分された牛について全額補償を行い、移動制限や搬出制限地域内外での肉用牛生産者に対し万全の補償、経営支援対策を実施すること―などを求めました。

 「現在、専門家委員会で発生原因や感染ルートの解明を行っている」とする農水省に対して、交渉参加者は、中国、韓国など口蹄疫発生国から稲わらを輸入し続けている事実を取り上げ、「口蹄疫発生国からの稲わらや肉類の輸入禁止措置をとれ」と要求しました。

 農水省は「輸入稲わらは、加熱して殺菌処理を義務付けているので心配ない。輸入を止めれば、WTO(世界貿易機関)の動植物の防疫について定めたSPS協定に違反するおそれがある」と弁明しました。

 参加者は、加熱が圧縮された稲わらの内部まで行き届いていない可能性を指摘。「口蹄疫が多発している国から輸入を続けることは許されない。感染の可能性があるあらゆるルートを遮断することこそ求められる」と追及しました。

 農水省は、踏み込んだ答弁は避けましたが、「そのような声があることは受け止める」と答えました。

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 さらに農水省が「経営困難な農家に対し、家畜疾病経営維持資金の融資枠を20億円から100億円に拡大した」と述べたのに対し、参加者は「融資では返さなければならない。融資でなく補償にすべきだ」と指摘。「日本の畜産の存続にかかわる事態だ。畜産農家の不安に応える対策をとれ」と強く要求しました。

(注)2010年1月以降5月4日までに、中国(香港を含む)で14件、韓国で17件の口蹄疫が発生しています。

(新聞「農民」2010.5.17付)
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2010年5月

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