“耕畜連携”農業にとりくむ
“おこめ豚”を飼育
宮城・大崎市田尻地区 養豚を営む日向一郎さん
エサ米生産農家と
喜び分かち合いたい
4月から実施された水田利活用自給率向上事業では、飼料用米に全国一律で10アールあたり8万円が交付されます。
宮城県大崎市田尻地区で養豚を営む日向一郎さん(62)は、森と水田に囲まれた環境を生かして、飼料用米生産者と畜産農家が協力する耕畜連携の農業に取り組んでいます。
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飼料米を食べて育った豚です。(左から)日向一郎さん、伸子さん夫妻 |
「養豚農家をめぐる環境は厳しく、廃業する仲間が増えている」と心配する日向さんは、排水や悪臭の問題をクリアしながら、地域の中で存在を認めてもらおうと懸命です。飼料用米に取り組むのも、消費者のことを考えてのこと。
豚の飼料には、非遺伝子組み換えトウモロコシと大豆かすを主体に与え、飼料用米を配合。さらに肉質改善のために食パンくずを与えています。
豚肉は、「たじりのおこめ豚」として、日本販売農業協同組合連合会、株式会社加工連を通じて、消費者に提供されます。「健康によく、クセがなくてジューシーな肉だ」と評判です。
「この事業は、農家にとってはいい制度。長く続いてほしい」と願うのは、田尻地区で40アールほど飼料用米に取り組む鈴木一栄さん(60)。みどりの農協を通じて、日向さんに飼料用米を提供しています。
事業がスタートした今年、地域でも、飼料用米の作付けを始めた農家は多いといいます。
鈴木さんは「手間もコストもあまりかからないが、悩みは単価がキロあたり20〜30円と低いこと。単価が上がり、多収穫になればもっと取り組む農家が増えるはず」と課題を述べます。
日向さんと鈴木さんが心配するのは「事業がせっかく始まったのに、選挙で政権が代わるごとに、制度がコロコロ変わってしまうことだ」と口をそろえます。
今後、価格や肉質の状況をみながら、飼料用米の配合割合を増やしていきたいという日向さんは「耕畜連携の循環型農業に取り組むなかで、自給率向上と地域農業の活性化という喜びを飼料用米生産者と分かち合えればいいですね」と期待を寄せています。
(新聞「農民」2010.5.3付)
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