「農民」記事データベース20100503-923-06

石井 啓雄さんを悼む

農民連副会長 真嶋 良孝


画像 本紙にたびたび寄稿してくださるとともに、全国研究・交流集会や農業委員学習会などで講師を務めてくださった石井啓雄・駒沢大学名誉教授が4月10日に逝去されました。78歳でした。

 石井さんは1958年から21年間農林省に在職し、うち16年を農地改革の成果を引き継ぐセクションであった農地局農地課(後に構造改善局農政課)で過ごし、78年から02年まで駒沢大学経済学部教授を務めました。

 私が石井さんに初めてお会いしたのは73年で、耕す者が自ら農地を所有する原則に貫かれた農地改革の意義と、その成果を厳守する農地法の重要性を教えていただきました。以来、私は“石井学校”の不出来な生徒であり続けました。ビア・カンペシーナから、日本の農地改革について報告を求められた最初の時にも教えを乞(こ)うたことを昨日のように思い出します。

 石井さんは努力の人であり、篤(あつ)い人でした。農地課の激務のなかで、73年に価格保障の研究で博士号を取得し、アテネ・フランセに通いフランス語をマスターして、スイス農業政策研究の第一人者になりました。さらに実名のほかに数々のペンネームを駆使して、戦闘的で誠実な論考を発表し続けました。

 ここに通底しているのは、農地改革の成果を引き継ぎ、農民的家族経営を発展させる理論を深化させることに対するほとばしるような情熱でした。告別式で奥様が「言いたいことを、言いたいように言い続けて来られた、幸せな人生だった」と振り返られたように、熱い人でした。

 故人は2000年以降、発癌(がん)に3度見舞われました。石井さんが本紙にかなり長い連載を寄稿してくださり、学習会の講師を務めてくださったのは、こういう時期でした。私たちの無理なお願いが平穏な老後を奪ったのではないかと恐れています。

 石井さん、78年余の生涯にわたる献身的なご活躍、ほんとうにご苦労さまでした。私たちの運動に親身に寄り添っていただき、ありがとうございました。大きな後ろ盾を私たちは失いましたが、生前の情熱と遺志を必ず引き継ぎます。安らかにお眠りください。

(新聞「農民」2010.5.3付)
ライン

2010年5月

農民運動全国連合会(略称:農民連)
〒173-0025
東京都板橋区熊野町47-11
社医研センター2階
TEL (03)5966-2224

本サイト掲載の記事、写真等の無断転載を禁じます。
Copyright(c)1998-2010, 農民運動全国連合会